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『特急やくも』とは? 山陰と山陽を結ぶ山越え列車
『特急やくも』は島根県の出雲市と、岡山県の岡山市とを結ぶ特急列車です。
片道の乗車時間は約3時間20分。
山陰と山陽をダイレクトにつなぎ、出雲から松江・米子(よなご)を通って中国山地を越えて、倉敷・岡山へと至ります。
【『特急やくも』の停車駅】
出雲市 ~ 宍道 ~ 玉造温泉 ~ 松江 ~ 安来 ~ 米子 ~ 伯耆大山 ~ 根雨 ~ 生山 ~ 新見 ~ 備中高梁 ~ 総社 ~ 倉敷 ~ 岡山
2024年4月に登場した 新型車両の273系は、美しい「やくもブロンズ」が目印! 山陰を象徴する4つのブロンズ色をベースにした、オリジナルカラーです。
・宍道湖に沈む夕日の鬱金(うこん)色
・「たたら製鉄」の黄金(こがね)色
・「大山(だいせん)夏開き祭」のたいまつの銅(あかがね)色
・山陰伝統の赤瓦の町並みの赤銅(しゃくどう)色
レトロ可愛い白×赤から一新して、より人気を呼んでいます。
乗り心地がさらに快適に! 最新技術で山越えの乗り物酔いを軽減
そして乗り心地もより快適に進化!
カーブが連続する中国山地で、横揺れを軽減して乗り物酔いをしにくくなりました。
その秘密は、「車上型の制御付自然振り子方式」。
線路のカーブの遠心力を打ち消すように、最適なタイミングで車体が傾きます。
そのため体が振り回される感じが減って、より快適に過ごせます。
ほかにも以下のような改善で乗り心地がアップ!
「乗り物酔い評価指数」が最大で23%改善しています。
・座り心地を良くした間隔の広い座席
・空気清浄機を各車両に搭載
・全席コンセント/車内Wi-Fi完備
・防犯カメラで車内セキュリティUP
ほかにも好きな時に座席を立ってリフレッシュできる「フリースペース」や「多目的室」(写真)、大きな荷物を置ける「荷物スペース」などを設置。
これらは切符の種類に関わらず誰でも使えるので、3時間弱の列車旅も快適です。
ファミリーでの帰省やグループ旅行に便利! ゆったりくつろげる「セミコンパートメント」
「家族で帰省や旅行したい!」
「グループで山陰・山陽を旅したい」
という人には、ちょっと贅沢な「セミコンパートメント」がおすすめです。
『新型やくも』273系から登場したグループ向けの座席で、大型テーブルと足を伸ばせるシートがあります。
まるで我が家のように足を伸ばしてくつろげる、快適空間!
グリーン車(1号車)の一角にあり、同じ車内(1号車)には、ベビーベッドを備えた「多機能トイレ」や「車椅子スペース(3カ所)」など、バリアフリー設備が充実しています。
『特急やくも』のお得な割引制度
「『特急やくも』にお得に乗りたい」
という人には、2種類の割引きっぷがあります。
①WEB早特
JR西日本の公式予約サイト「JRおでかけネット」で予約できる、早割きっぷです。
・7日前から予約できる「WEB早特7」
・14日前から予約できる「WEB早得14」
の2種類があり、どちらも1名から予約OK!
ただし 乗車時間や乗車区間の変更ができないので、お気をつけください。
HP:https://www.jr-odekake.net/goyoyaku/campaign/web-hayatoku/
②「EXサービス限定」乗継チケットレス特急券
岡山駅などを発着する新幹線を「EXサービス(エクスプレス予約・スマートEX)」で予約した場合のみに購入できる、乗継用のチケットレス特急券です。
新幹線 ⇔ 特急やくも の乗り換えのみ購入可!
なのでお気をつけください。
「JRおでかけネット」のネット予約システム「e5489」で買えますが、WESTERへの会員登録(無料)とクレジットカードが必要 です。
HP:https://tickets.jr-odekake.net/shohindb/view/consumer/tokutoku/detail.html?staticShnId=100013743
『特急やくも』のオリジナルグッズ・コラボ商品
『特急やくも』のオリジナルグッズや、島根・鳥取の名物とコラボしたグルメ商品もあります。
JR西日本の産直オンラインショップ や、メーカーのホームページなどから買えるので、旅の記念にぜひどうぞ!
①大山Gビール 「特急やくも」歴代6車種コンプリートセット
大山は広大なブナの森をいだく名水の源。
そんな大山の伏流水でかもした地ビールに、歴代の『特急やくも』全6車種のラベルがつきました。
1972年~2024年まで走り続けてきた名車両の数々を、美味しい地ビールと共に鑑賞!
「大山Gビール」の人気のフレーバー6種類(ピルスナー・ペールエール・ヴァイツェン・スタウト・八郷・強吟)のセットです。
メーカー:久米桜麦酒株式会社
②茎ほうじ茶「不昧茎」ティーバッグやくもブロンズver
松江の老舗のお茶屋さん・中村茶舗の出雲産煎茶とコラボしたティーバッグ。
『特急やくも』の優しいタッチのイラストと、香り高い茎ほうじ茶が旅情を誘います。
メーカー:有限会社中村茶舗
③273系やくもドリップ珈琲3Pセット
山陰はたくさんのカフェがせめぎあうカフェ激戦区。
そんな山陰の人気店・澤井珈琲(境港市)がブレンドした『特急やくも』をイメージしたコーヒー。
『やくも』を描いた美しいパッケージで、ちょっとした贈り物にもピッタリです。
メーカー:澤井珈琲
『特急やくも』沿線の見どころ
『特急やくも』のオリジナルグッズや、島根・鳥取の名物とコラボしたグルメ商品もあります。
『特急やくも』の沿線には見どころがたくさん。
観光列車としても優秀で、途中下車の旅を楽しむのもおすすめです。
出雲から岡山まで駆け抜ける約3時間20分は、感動と絶景の連続!
宍道湖・松江・大山(だいせん)・中国山地・備中松山城・倉敷・岡山など、沿線の人気スポットをご紹介しましょう。
①出雲
巨大な大注連縄(おおしめなわ)で知られる出雲大社のお膝元。
参道の神門通り(写真)には、出雲ならではの文化と風情が漂っています。
“日本三大そば”のひとつ「出雲そば」や、名物の「出雲ぜんざい」は人気のご当地グルメ!
日本海の海の幸や、高級魚「のどぐろ」料理も好評です。
神在月に八百万の神様をお迎えする稲佐の浜・日本一の高さを誇る出雲日御碕灯台・伊勢神宮と対をなす日御碕神社などもお見逃しなく!
②宍道 ~ 玉造温泉 ~ 松江 ~ 安来
出雲と松江にまたがる宍道湖(しんじこ)(写真)は、日本で7番目に大きい湖! “日本の夕陽百選”に選ばれた絶景スポットです。
そのそばにある玉造温泉は、“日本最古の美肌温泉”として知られる美人の湯です。
松江は“日本三大和菓子処”に数えられる城下町で、国宝・松江城(写真)で有名です。
この一帯には江戸時代さながらの文化や建物が多々残っていて、和菓子とお茶・宍道湖七珍と呼ばれる宍道湖の魚介類・日本海の海の幸などを味わえます。
安来にも難攻不落で知られた日本一の山城・月山富田城跡があり、米子の米子城跡などとあわせてお城巡りを楽しめます。
③米子 ~ 伯耆大山
北に日本海、南に大山(だいせん)をいただく米子(よなご)は、美しい風景に囲まれた開放的なまち。
皆生温泉や米子城跡などの名所も多く、“伯耆(ほうき)富士”と呼ばれる大山は関西・山陽から通いつめる人が多いアウトドアスポットです。
隣の境港市には水木しげるロードや境港、驚異の絶景「ベタ踏み坂」などがあり、鳥取でも有数の観光地!
境港の名物ベニズワイガニや、海鮮丼を味わうのもおすすめです。
④中国山地エリア(根雨 ~ 生山 ~ 新見 ~ 備中高梁 ~ 総社)
『特急やくも』での中国山地越えもお楽しみのひとつ。
起伏とカーブが連続する区間を、たくみな運転で駆け抜けます。
この区間は豊かな自然と古き良き日本の風景が魅力で、ノスタルジックなムードが漂います。
●根雨
大山と奥出雲の間に位置する静かな山里。
毎年冬~春にかけて飛来するオシドリの群れを見られるオシドリ観察小屋や、金運パワースポットとして大人気の金持神社があります。
●新見
ダイナミックな地形が見られる山あいの町。
希少な黒毛和種「千屋牛」やブドウ・桃などが名物で、満奇洞(まきどう)(写真)や井倉洞(いくらどう)などの鍾乳洞を探検を楽しめます。
●備中高梁(びっちゅうたかはし)
“備中の小京都”と呼ばれる古都。
日本で一番高い山城・備中松山城(写真)があり、天候によっては雲海に浮かぶ幻想的な姿が見られます。
●総社(そうじゃ)
かつて吉備国(きびのくに)の中心だった地で、たくさんの史跡が残っています。
桃太郎の鬼退治伝説(吉備津彦と温羅)が残る鬼ノ城(写真)など、岡山の歴史を感じられます。
⑤倉敷 ~ 岡山
“倉敷美観地区”(写真)に代表される、歴史ある町並みが残る倉敷。
鷲羽山からは瀬戸内海の島々と、それらをつなぐ瀬戸大橋の大パノラマを楽しめます。
そして『特急やくも』の終点の岡山には、日本三名園のひとつ岡山後楽園や、その門前町の出石町、豊臣五大老の一人・宇喜多秀家によって築かれた岡山城などがあります。
途中下車しても楽しい『特急やくも』。
ぜひ気になる町で降りて、山陰と山陽を結ぶ鉄道の旅を満喫してください。
『特急やくも』の歴史と「リバイバル車両」
1972年に登場した『特急やくも』は、最初の『国鉄色やくも(381系)』から数えて全6種類の車両が存在します。
それぞれ個性的なカラーリングで、たくさんの人々に愛されてきました。
2024年の夏からはブロンズ色の『新型やくも(273系)』に統一されましたが、2022年3月~2024年6月までは、歴代の『特急やくも』のカラーリングをリバイバル塗装した『リバイバルやくも』が運行していました。
そんな『リバイバルやくも』の勇姿をご紹介します。
※今後も一部のダイヤを381系で運行する場合があります
①国鉄色やくも
昔懐かしいレトロなツートンカラー!
赤×ベージュのカラーが実に国鉄らしくて郷愁をさそいます。
オリジナル車両の運行期間:1982年~2010年ごろ
②スーパーやくも
パープル系×白の爽やかなカラーリング。
パノラマグリーン車を連結した豪華版の「やくも」で、2006年までノーマルの「国鉄色やくも」と共に走っていました。
オリジナル車両の運行期間:1994~2006年
③緑やくも
グレーのボディに緑と黄色のラインが入った『やくも』。
自然豊かな路線にとてもなじむカラーです。
オリジナル車両の運行期間:1997年~2011年
④ゆったりやくも
これまで活躍してきた381系を全面的にリニューアルした車両。
座席の座り心地や間隔などを改良して、よりゆったり乗車できるようになりました。
色もベージュ×赤 → 白×赤に変わり、2010年にはすべての「やくも」が『ゆったりやくも』と入れ替わりました。
オリジナル車両の運行期間:2007年~2024年
- DATA
特急やくも
HP:https://www.jr-odekake.net/railroad/yakumo/
運行区間:JR出雲市駅(山陰本線)~JR岡山駅 (山陽本線)
取材協力・
写真提供:
JR西日本 中国統括本部 経営企画部/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)