松江と出雲にまたがる宍道湖(しんじこ)で獲れる、代表的な七つの珍味。
全国的に有名な「大和しじみ」をはじめ、海水と淡水が入り混じった汽水湖ならではのうなぎや、和紙で包んで焼き上げる「奉書焼き」で有名なスズキなど、四季折々の豊かな恵みから選ばれました。
島根旅行に行くなら、ぜひ味わってみたい名物です。
~ 目次 ~
松江と出雲の食文化を育んだ、7つの珍味!
宍道湖(しんじこ)。
島根県で一番大きな湖で、全国でも第七位の面積を誇っています。
松江から出雲にかけて広がる雄大な景色は、そこに沈む夕陽が‟日本の夕陽百選”に選ばれるなど、情緒たっぷり!
島根旅行のイメージビジュアルでもよく見られる、代表的な景色です。
そんな宍道湖で獲れる四季折々の恵みが、この「宍道湖七珍(しんじこしっちん)」。
宍道湖は日本海とつながっているため、淡水と海水が入り混じった「汽水湖」になっています。そのため季節ごとに膨大な魚や貝がとれ、その多彩な恵みの中から選ばれました。
七珍のラインナップは、スズキ・シラウオ・コイ・うなぎ・モロゲエビ・アマサギ・シジミ。
島根旅行に行くなら絶対に食べたい、‟水の都”松江と‟神話のふるさと”出雲の名物です!
【「宍道湖七珍」を食べられる場所】 松江・出雲の食事処・居酒屋・旅館・ホテルなど
【「宍道湖七珍」を食べられるお店】 松江のお店 / 出雲のお店
※和食・郷土料理・魚介料理のお店に直接お問い合わせください
宍道湖産でとれたから美味しい! 「汽水湖」ならではのグルメの秘密 ~七珍のラインナップ~
「汽水湖」の宍道湖でとれた七珍は、海や川でとれるそれらとはひと味違います。
海水と淡水が混ざりあい、季節や場所によってもその比率が変わる、不思議な湖ならではの美味しさなのです。
たとえば元々は淡水魚のコイは、身に泥臭さがなくて洗い(刺身)でも美味!
こうしたメリットを生かして、島根ならではの郷土料理にしています。
①スズキ(鱸)
白身で淡白なのに、ジューシーな旨味の高級魚!
和紙に包んで蒸し焼きにする、「スズキの奉書焼き」で有名です。
この「スズキの奉書焼き」は、松江に茶道とお茶菓子を広めた雅(みやび)なお殿様・松平不昧(ふまい)公の大好物でした。
さらに「古事記」の国譲り神話にも登場しており、とても古くから存在しました。
海のスズキは夏が旬ですが、宍道湖では3月~12月頃にとれます。
味は水温が低くなって、身に脂が乗りだす真冬が美味です。
(出典:農林水産省Webサイト「うちの郷土料理 島根県 スズキの奉書焼き」を加工して作成)
②モロゲエビ
エビの王様・車海老の仲間です。
大きさは約10cmと小ぶりですが、背ワタが細くて殻が柔らかいため、頭から丸ごとかじれます。
旬は秋で、車海老の仲間だけに味の良さは一級品!
島根での食べ方は塩焼き・唐揚げ・煮付けなどです。
「モロゲエビ」は島根県東部の方言で、一般的には「ヨシエビ」と呼ばれています。
ですが体以上に長いヒゲがあり、それをユラユラ揺らめかせている様子は、「モロゲエビ」の名前の方がしっくくるかもしれません。
③うなぎ(鰻)
みんな大好き、蒲焼の王様!
宍道湖産のうなぎは身が引きしまっていて味わい深く、蒲焼によく向いています。
蒲焼職人に伝わる「裂き3年・タレ8年・焼き一生」という教えは、ここ島根から上方(かみがた/京都や大阪)に伝わって、それから全国に広まった、とも言われています。
その焼き方は、まずは身を素焼きしてから、タレをつけて照り焼きにします。
これは「地焼き」と呼ばれていて、‟蒲焼の関西風”としても有名です。
ほかの料理は、蒲焼・白焼・鰻丼・たたき・洗い(刺身)・骨せんべい・燻製・肝珍・うなっこ丼・雑炊など。うなぎの定食やフルコースを出してくれるお店も多く、贅沢なグルメが楽しめます。
コース料理は準備に時間がかかったり、人気店は予約がとりづらかったりするためで、旅行の前に予約するのがオススメです。
④アマサギ(ワカサギ)
湖の魚と言えば、ワカサギ!!
宍道湖では「アマサギ」と呼ばれ、旬は漁が解禁される10月中旬~3月末です。
この時期はメスが卵を抱えているため、プチプチした食感の「子持ちアマサギ」が楽しめます。
鮮度が良いほど美味しいので、宍道湖に面した松江や出雲の名物になったのも納得の味。さらに宍道湖のアマサギは「南限のワカサギ」でもあって、その珍しさも魅力です。
近年は温暖化の影響で、宍道湖の水温が高くなりとれる量が減っています。
島根では天ぷら・塩焼き・醤油の付け焼・南蛮漬などで食べられますが、どれも大切に味わいたい味です。
⑤白魚(シラウオ)
これも湖ならではのお魚!
その名のとおり、鮮度が良いものは美しく透明に透き通っています。
味は旨味がとても強くて「出汁(ダシ)いらず」とも言われます。
そのためどんな料理にもよく合いますが、島根では、かき揚げ・卵とじ・刺身・天ぷら・澄まし汁・辛子酢味噌などで出されます。
松江は江戸時代に名産地として名をはせ、1930年代には東京や大阪の一流料亭に「松江のシラウオは日本一!」とたたえられるほどでした。
漁期は11月中旬~5月末なので、新鮮なシラウオを味わいたい方は、この時期を狙っての旅行がおすすめです。
⑥鯉(コイ)
「川に住んでいるから泥くさい」と思われがちな魚。
ですが、汽水湖の宍道湖の鯉は、雑味のない澄んだ味わいです。
島根の代表料理は「鯉の糸造り」で、細く切って塩ゆでした身を腹子(卵巣)と和え、「煎り酒」という独自のタレでいただきます。
ほかにも洗い(刺身)・鯉こく(味噌汁)などで出されます。
旬は冬~春で、特に産卵期の4~5月は身に栄養が乗ってとても美味しくなります。
かつては島根のお祝いの席に欠かせない御馳走で、特に「鯉の糸造り」は鎌倉時代から明治時代にかけて、天皇や将軍に献上する「御前科理」に定められていました。
(出典:農林水産省Webサイト「うちの郷土料理 島根県 鯉の糸造り」を加工して作成)
⑦シジミ(大和しじみ)
『宍道湖七珍』の大トリをつとめるのは、あまりにも有名なシジミです。
種類は「大和シジミ」で、粒が大きくてとても肉厚。
さらに全国一の漁獲量を誇ってもいます。
島根では、このシジミを使った「しじみ汁(味噌汁)」や「すまし汁」を日常的に食べています。
シジミからとても濃厚なダシが出るので、えも言われぬ美味しさになります。
ホテルや旅館でも、必ずと言っていいほど出てくる「しじみ汁」。
真空パックや冷凍のお土産もあって、こちらはお湯に入れて味噌を溶かすだけで本格的な「しじみ汁」が味わえます!
(出典:農林水産省Webサイト「うちの郷土料理 島根県 しじみ汁」を加工して作成)
実は「七珍」では足りなかった!? 豊かな宍道湖の豊かな恵み。
「宍道湖七珍」は、宍道湖の膨大な恵みから選ばた選りすぐりの珍味です。
ですが、宍道湖ではあまりにたくさんの魚介類がとれるため、それらを七つに絞りこむのは大変だったといいます。
「赤貝やハゼは入れないのか?」「渡り鳥でやってくるカモも入れるべきでは?」といった意見が飛び交い、宍道湖の豊かさゆえに、なかなかまとまりませんでした。
ちなみに「宍道湖七珍」の大元は、かつて松江で発行されていた「松陽新聞」の主筆(編集や社説の総責任者)をつとめていた、松井柏軒氏の記事です。
昭和5年(1930)年に掲載された「宍道湖の十景八珍」がそれで、その後も多くの議論を経た上で、今の「宍道湖七珍」に決まりました。
島根を旅行するなら、ぜひ食べてみたい「宍道湖七珍」。
いろんなところで食べられる「シジミ汁」から、ちょっとレアな珍味まで様々ですが、ぜひ七珍 全部を味わい尽くしてみてください!
- DATA
宍道湖七珍
HP:https://www.kankou-shimane.com/destination/20527
住所:島根県松江市 / 島根県出雲市
<旅行・食事処などのお問い合わせ>
TEL:0852-27-5843 (松江観光協会)
TEL:0853-31-9466 (出雲観光協会)
<その他のお問い合わせ>
TEL:0852-55-5214 (松江市観光文化課)
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ライター:風間梢(プロフィールはこちら)