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日本海沿岸の郷土料理 ~鮮度抜群の海の幸がいっぱい!~
鳥取県はカニの水揚げ量が日本一!
ほかにもエビやハタハタなど、たくさんの新鮮な魚介類が獲れます。
そんな海の幸を使った郷土料理は、鳥取県全域の沿岸部で食べられています。
鮮度抜群の海鮮が満載の郷土料理を、ぜひお楽しみください。
①かに寿司
鳥取県の名物と言えばカニ!
カニの身をふんだんに使った産地ならではの豪華なお寿司です。
一見ちらし寿司に見えますが、酢飯に人参・コンニャク・干しシイタケといった具材を混ぜ込まないのが鳥取流。
代わりにカニのほぐし身を多く混ぜ込み、上には錦糸卵やサヤエンドウの細切りなどを載せて、飾りに棒肉やハサミをあしらいます。
カニの朱色と錦糸卵の黄色がめでたく、目にも美味しいごちそう!
カニはベニズワイガニまたは松葉がにで、濃厚な旨みが上品な酢飯とよく合います。
「かに寿司」は全国各地で食べられていますが、元祖は昭和27年に鳥取県内の弁当会社が発売した「元祖かに寿し」だと言われています。
地域:鳥取県全域の沿岸部
②親ガニの味噌汁
©鳥取県
親ガニとは卵を抱いたメスのズワイガニのこと。
鳥取県外では「セコガニ」や「セイコガニ」とも呼ばれています。
その親ガニを大根と一緒に煮込んで、旨みたっぷりの味噌汁に仕上げた一品。
観光地では海鮮丼やお刺身定食の汁物として出されることが多く、単品で注文できるお店もあります。
親ガニはオスのズワイガニ(松葉がに)よりもかなり小さく、お椀に収まるくらいの大きさ。
そのぶん旨みがギュッと詰まっていて、卵とカニ味噌からしみ出る出汁が何とも言えない美味しさです!
親ガニの漁期は11月~12月で、この時期限定の郷土料理です。
地域:鳥取市ほか
③モサエビの刺身
出典:農林水産省Webサイト
(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/mosaebi_no_sashimi_tottori.html )
エビの中でも抜きんでた美味しさを誇る「幻のエビ」!
旨みの素となるアミノ酸の一種「タウリン」が、なんと一般的な甘えび(ホッコクアカエビ)の約3.5倍もあります。
ただし鮮度が落ちやすく、水揚げ港の近くにしか出回らないため、産地の外ではまず食べられません。
※冷凍・輸送技術の発達によって現在はお取り寄せもできるようになりましたが、生は半日ほどでも味が落ちます
そんな「モサエビ」は新鮮なお刺身で食べるのが一番!
漁期は9月~翌年5月で、お刺身のほかにモサエビ丼(海鮮丼)・焼きエビ・素揚げ・天ぷら・味噌汁なども人気です。
産地ならではの美味しさをぜひ味わってみてください♪
地域:鳥取県全域の沿岸部
鳥取県東部の郷土料理 ~因幡エリア(鳥取市・岩美町・八頭町・智頭町など)~
かの有名な鳥取砂丘をはじめ、山陰海岸ユネスコ世界ジオパークに含まれる浦富海岸や、戦国時代に造られた鳥取城跡(写真)、江戸時代に栄えた智頭宿など、大自然と文化的な史跡が混在するエリア。
その歴史と背景がうかがえる郷土料理を楽しめます。
④柿の葉寿司
©鳥取県
酢飯に塩と酢で〆た鱒(ます)の身を載せて、山椒の実を添えた押し寿司。
柿の葉っぱを敷いて彩りを添えます。
鳥取県東部の山あいにある智頭町では、新鮮な魚が手に入りにくかったため、塩と酢で鱒の身の保存性を高めました。
柿の葉に含まれるタンニンには防腐効果が、薬味の山椒には殺菌・保存効果があります。
鱒の身のオレンジ色と柿の葉の緑が華やかで、目にも美しいお祝い料理!
昔は来客のおもてなし・お祭り・お盆などに出されることが多かったそうですが、現在は観光客もお弁当や和食店などで食べられます。
地域:智頭町
⑤ハタハタ寿司
出典:農林水産省Webサイト
(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/hatahata_zushi_tottori.html )
ハタハタとは、とろけるような白身の美味しい小魚!
鳥取県ではシロハタとも呼ばれていて、全国トップクラスの漁獲量を誇ります。
鳥取砂丘からほど近い賀露(かろ)港で水揚げされるハタハタは旨みがたっぷり!
「寿司」と言ってもシャリはお米ではなく「おから」です。
内臓を取って背開きにし、塩と酢で〆たハタハタに、炒って味付けした「おから」に炒った山椒または麻の実(おのみ)を混ぜたものを詰めます。
これを筒状の一口大に切れば「ハタハタ寿司」の完成!
賀露地区で春に行なわれる「ホーエンヤ祭」のご馳走として食べられてきました。
砂糖・ごま油・塩・酢などで調味された「おから」と、ジューシーなハタハタの身が好相性です。
地域:鳥取市賀露町
⑥どんどろけ飯
©鳥取県
お化けのような名前ですが、素朴でやさしい味の混ぜご飯です。
油を入れ、熱したフライパンで豆腐を炒める時にバリバリと音がすることから、方言で雷を意味する「どんどろけ」を思わせると、この名前がつきました。
昔は豆腐がごちそうであり、貴重なタンパク源でした。
そのため村ごとにあった「豆腐小屋」で作られた豆腐と、季節の野菜を使って作る「どんどろけ飯」は、村の集会や農作業の節目などに食べられていました。
昭和になってからは農家で鶏を飼うようになり、鶏肉も入れるようになりました。
炊飯器の普及につれて、元の炊き込みご飯から混ぜご飯へと変化したと言われています。
地域:鳥取県東部~中部
鳥取県中部の郷土料理 ~倉吉市・三朝町エリア~
室町時代は城下町として栄えた倉吉や、「日本一危険な国宝」と呼ばれる三徳山三佛寺投入堂があるエリア。
昔ながらの街並みが風情たっぷりで、歴史的建造物も数多く残っています。
そんな古を感じる土地で生まれた、素朴で懐かしい郷土料理を味わえます。
⑦こも豆腐
©鳥取県
わらのむしろ(こも)に豆腐を並べ、人参・ゴボウ・干ぴょう・旬の野菜などを入れて、包んで蒸し上げた料理。
だし汁で煮て味を含ませたり、そのまま醤油を付けて食べたりします。
出来立てのこも豆腐から、わらの良い香りが漂います。
昔の鳥取県では魚があまり獲れなかったため、豆腐は庶民の貴重なタンパク源でした。村々には共同の「豆腐小屋」があり、村民達が協力しあいながら豆腐を作っていました。
「豆腐小屋」で作られた豆腐をお祭りや冠婚葬祭・法事などで出すごちそうにしたのが「こも豆腐」。
最近では行事やおもてなしの場で汁の実に使われることもあるようです。
地域:鳥取県中部(倉吉市など)
⑧いぎす
出典:農林水産省Webサイト
(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/igisu_tottori.html )
独特な見た目ですが、原料は「いぎす草」と呼ばれる海藻。
別名「えごのり」とも呼ばれていて、主に日本海・瀬戸内海の沿岸に生えています。
それをトロ火で煮溶かして、元々の成分だけで自然に固めます。同じく海藻が原料の寒天とよく似た製法です。
材料は「いぎす草」と水だけで、とってもシンプル!
これにゴマを振りかけて、酢味噌やショウガ醤油などを付けて食べます。
精進料理には欠かせない一品で、磯の香りと個性的な食感を楽しめます。
地域:鳥取県中部
鳥取県西部の郷土料理 ~伯耆エリア(米子市・境港市・伯耆町・大山町など)~
中国地方の最高峰・大山(だいせん)がそびえる自然豊かなエリア!
「ダイヤモンド大山」の絶景が注目された米子城跡、ベニズワイガニの水揚げ量日本一の境港などがあります。
海の幸・山の幸が盛りだくさんの滋味豊かな郷土料理を味わえます。
⑨大山おこわ
©鳥取県
大山の麓で採れた食材をふんだんに入れ、醬油味で炊きこんだ「おこわ」。
代表的な具は鶏肉・こんにゃく・人参・ゴボウ・きのこ・山菜・栗などです。
「大山おこわ」は、かつて比叡山にも並ぶ僧兵を擁していた大山寺で、戦勝祈願として山鳥の肉と山菜を入れた「おこわ」を炊き出したのが始まりと言われています。
明治時代を過ぎても、大山寺のそばで開かれていた牛馬市や、大山参りのお弁当として親しまれてきました。
鶏肉と野菜の旨みがしみこんだ滋味深い味わいは、旅や登山の疲れが吹き飛ぶ美味しさ!
大山寺参道沿いのお店や旅館の名物料理です。
地域:鳥取県西部・大山山麓
⑩いただき
出典:農林水産省Webサイト
(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/itadaki_tottori.html )
大きな油揚げの中に生のお米や野菜を詰めて、だし汁で炊き上げた郷土料理。
弓ヶ浜半島(境港市・米子市)を中心に食べられています。
境港のお寺の住職が福井県のお寺で出された油揚げを気に入って持ち帰り、お米や野菜(人参・ゴボウ・干ししいたけなど)を詰めて炊いたのが始まりだと言われています。
名前の由来は諸説あり、米が貴重な時代には大変なごちそうであったため、近所の方からいただいたことへの感謝の気持ちがそのまま「いただき」となったという説、形が大山の山頂(いただき)に似ているから、という説などがあります。
別名「ののこ飯」とも呼ばれていて、これは綿を詰めた着物に形が似ているため、「布子」という言葉がなまったものだと言われています。
見た目はいなり寿司のようですが、酢は入っていないので炊き込みご飯のような味わい!
境港で採れた赤貝や、鶏肉を入れることもあります。
お弁当や居酒屋メニュー、スーパーのお惣菜などで食べられます。
地域:鳥取県西部・弓ヶ浜半島(境港市・米子市)
取材協力・
写真提供:
©鳥取県・鳥取県商工労働部兼農林水産部 市場開拓局 食パラダイス推進課・農林水産省Webサイト「うちの郷土料理」/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)