智頭宿とは? 鳥取と京都・江戸を結ぶ「智頭往来」の宿場町
鳥取砂丘からまっすぐ南に下った中国山地の山あい。
豊かな森に囲まれた智頭町(ちづちょう)に、『智頭宿』はあります。
かつて鳥取藩から京都や江戸へと通じる主要な街道だった「智頭往来」。
その宿場町として、行き交う旅人や商人たちで賑わっていました。
さらに鳥取藩主が参勤交代で江戸に向かう際の止宿※でもあり、藩主が泊まる宿や、休憩した茶屋、町を治める奉行所、制札場※などがありました。
※止宿(ししゅく)とは:参勤交代の途中でお殿様が泊まる宿
※制札場(せいさつば)とは:藩や幕府の決め事や禁止令などを、木の板や紙に書いて掲示して領民に周知した場所
智頭宿の見どころ
智頭宿の見どころは、なんと言っても宿場町の歴史を物語る風情たっぷりの町並みです。
国の重要文化財の「石谷家住宅」や、有形文化財の「塩屋出店((西河克己映画記念館)」、マンガ「夏子の酒」にも登場した「諏訪酒造」など、江戸・明治・大正・昭和初期の建物が立ち並んでいます。
これらの伝統的な建築群になじむお店や、個性豊かなお食事処やカフェなど、大人が静かに過ごせるスポットがいろいろ。
そんな智頭宿の見どころをご紹介します。
①石谷家住宅
智頭宿のメインストリート・因幡(いなば)街道に面した石谷家住宅は、智頭宿を代表する商家の邸宅です。
江戸時代から地主や庄屋として栄え、宿場問屋や林業を営んで国政にも進出しました。
そんな石谷家の栄華を語る石谷家住宅は、日本の銘木と名工の技術で建てられた貴重な建築です。
江戸時代から昭和にかけて増築や改修を繰り返し、300年以上の歴史を積み重ねています。
敷地面積は3000坪で、部屋数は40余り。
とても広大な屋敷で、智頭町出身の名仏師・国米泰石による各部屋の欄間の彫刻は必見です。
屋敷の裏手には見事な日本庭園があり、池泉庭園(池のまわりを周遊できる庭園)・枯山水庭園(水を使わずに山水を表現した庭園)・芝生庭園の3種類で構成されています。
この庭園群と石谷家住宅の風景は、すべての季節で素晴らしいと評判です。
※庭園は「秋の特別庭園公開」の期間以外は立ち入れません
(屋内から眺めることはできます)
さらに蔵が7つもあり、うち母屋に近い3つ(写真左側)がギャラリースペースとして公開されています。
ここでは石谷家に代々伝わる名品や、地元作家の作品などを展示しています。
ランチやカフェができる喫茶室もあり、住宅のお座敷や土間ではコンサート・講演会・座禅会などが開かれることがあります(不定期)。
【石谷家住宅】
HP:https://www.ifs.or.jp/
住所:鳥取県八頭郡智頭町智頭396
電話:0858-75-3500
開館時間:10:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:水曜(祝日の場合は翌日)・12月28日~1月2日
②塩屋出店(お食事処たけよし)
国の登録有形文化財で、宿場町らしい立派な商家のお屋敷です。
中は和食がメインのお食事処「たけよし」になっていて、美しい中庭をながめながら食事ができます。
中庭の向こうには白亜の洋館「西河克己映画記念館」が見え、和洋折衷の景色を楽しめます。
塩屋出店は石谷家の分家で、雑貨商・宿屋・金融業などを営んでいました。
住所:鳥取県八頭郡智頭町大字智頭545
電話:0858-76-1200
営業時間:11:00~14:00
定休日:水曜・不定休
③西河克己映画記念館
塩屋出店の敷地内にある、白亜の洋館。
二階建ての切妻造で、一部に庇(ひさし)がついています。
昭和初期の美しい洋風建築で、波形の浅瓦葺、下板見張り、窓の額縁を柱型にしたスティックスタイル風の意匠など、当時の智頭宿の繁栄ぶりが伺えます。
館内は智頭町出身の映画監督・西河克己氏の資料館になっていて、「青い山脈」「伊豆の踊子」「潮騒」「一杯のかけそば」などの作品の貴重な資料や、映画のポスター・台本・スチール写真などを展示しています。
西河監督は数多くの映画作品を撮影しましたが、そのうち昭和41年に公開された日活映画「絶唱」は、智頭町がロケ地です。
住所:鳥取県八頭郡智頭町大字智頭545
電話:0858-76-1111(智頭町総合案内所)
営業時間:11:00~1:00
定休日:水曜
④板井原集落
日本の原風景が残る山あいの集落。
山の谷間に茅葺き(かやぶき)や瓦葺きの古民家が連なり、平家の落人の隠れ里だったとも言われています。
昭和42年(1967年)に板井原トンネルが開通するまでは、車で通行できず徒歩で行き来するしかありませんでした。
※現在も集落内への車の乗り入れはできません
智頭宿から約3kmなので、かつて街道を行き交った旅人の気分になって歩くのもおすすめです。
智頭宿のおすすめショップとお土産
続いてご紹介するのは、智頭宿の人気ショップです。
全国的な有名店もあり、グルメ好きさんやクラフト好きさんは必見!
智頭町の美しい自然から生まれた逸品に出会えます。
①「タルマーリー」のパンとクラフトビール
野生の菌だけで発酵させる、パンとクラフトビールを製造販売。
カフェと一棟貸しホテルも営業しています。
パンの小麦粉の一部は、近隣の小麦を自家製粉。
ビールはオーガニックの麦芽とホップを使い、智頭町の天然水で醸造。
町内でホップの自然栽培も取り組まれています。
パンもビールも、豊かな風味と味わいが絶妙!
遠方からもファンが訪れる人気店です。
【パン工房】
HP:https://www.talmary.com/
Instagram:https://www.instagram.com/talmary.chizu/
住所:鳥取県八頭郡智頭町智頭604-1
電話:0858-71-0106
※営業時間・定休日はInstagramでご確認ください
※オンラインショップあり
【カフェ・ショップ・ホテル】
住所:鳥取県八頭郡智頭町智頭594
電話:0858-71-0139
※営業時間・定休日はInstagramでご確認ください
②「藍染工房ちずぶるー」の藍染製品
“鳥取の水瓶を汚さない染色を”という想いから生まれた、女性7人で営む藍染工房。
染料となる植物「蓼藍(たであい)」を種から育て、その葉っぱを染料に加工し、1枚1枚手で染め上げています。
その特徴は「ちずぶるー」と呼ばれる澄んだ藍色。
「蓼藍」の収穫時に、葉っぱと茎を手作業でよりわけることによって生まれる繊細なカラーです。
HP:https://chizublue.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/chizubluestudio/
住所:鳥取県八頭郡智頭町大字智頭555
電話: 0858-75-3630
営業時間: 10:00~16:00
定休日:第4以降土・日祝(第1~3土曜の営業についてはInstagramでご確認ください)
③「諏訪酒造」のお酒
江戸時代末期の安政6年(1859年)に創業した酒蔵。
地元産の酒米を智頭町の清らかな伏流水(硬度2の超軟水)で仕込み、柔らかく口当たりの良いお酒に仕上げています。
併設のショップ「梶屋」では、日本酒の試飲もOK!
季節ごとのおすすめのお酒や、旬の料理に合うお酒を紹介してくれます。
智頭町や鳥取の名物を描いたオシャレなラベルは、ギフトにもおすすめです。
HP:https://suwaizumi.jp/
住所:鳥取県八頭郡智頭町智頭451
電話: 0120-113-518
営業時間: 10:00~17:00(10月〜3月は16:30まで)
定休日:年末年始
智頭宿のお祭り
智頭宿では、長い歴史と伝統を体感できるお祭りも開かれます。
代表的なお祭りは以下の2つ。
旅のスケジュールが合えばぜひ参加してみましょう!
①ちづ宿ハイカラ市(11月初旬)
歴史ロマンが香る宿場町を、ハイカラな着物姿でそぞろ歩き!
着物で訪れた人の中からNo.1のハイカラさんを選ぶ「ハイカラさんコンテスト」や、着物姿で町を練り歩くパレードなどが行われます。
ほかにも昭和レトロカーの展示、地元の名店が勢ぞろいする出店、狐の嫁入り行列など、タイムスリップしたような気分にひたれます。
開催日:11月初旬
※小雨決行(荒天の場合は中止)
会場:智頭宿一帯
お問い合わせ:0858-76-1111(智頭町総合案内所)
②智頭宿雪まつり(2月上旬)
©鳥取県
智頭宿はたくさんの雪が積もる豪雪地帯。
そんな昔話のような世界を満喫できる、雪の祭典です。
街道沿いに並べられた雪灯籠の灯りが幻想的で、出店やイベントなどでにぎわいます。
開催日:2月上旬
会場:智頭宿一帯
お問い合わせ:0858-76-1111(智頭町総合案内所)
- DATA
智頭宿(ちづしゅく)
HP:https://chizukankou-kurashiya.jp/highlight/places/chizusyuku/
住所:鳥取県八頭郡智頭町智頭
電話:0858-76-1111(智頭町総合案内所)
お問い合わせの受付時間:9:00~18:00
取材協力・
写真提供:
智頭町役場企画課・一般社団法人智頭町観光協会・鳥取県・タルマーリー・藍染工房ちずぶるー・諏訪酒造株式会社/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)