~ 目次 ~
島根県東部の郷土料理 ~松江・出雲・隠岐エリア~
①しじみ汁
(出典:農林水産省「うちの郷土料理」)
松江と出雲に面した宍道湖(しんじこ)は、日本でも有数のじじみの産地。
海水と淡水が入り混じった汽水湖で、立派なヤマトシジミが獲れます。
そんなしじみを入れたお味噌汁は、出雲地方の定番のお味噌汁!
旅館やホテルの朝ごはんや、和食ランチのおかずによく出てきます。
旨みたっぷりの出汁と味噌との相性が抜群で、具はしじみだけ、または薬味の青ネギを少々入れてシンプルに。
タウリンやオルニチンなどの栄養素が豊富で、旅の疲れをやさしく癒してくれます。
地域:松江市・出雲市とその周辺
②出雲そば
出雲と言えば蕎麦!
岩手県の「わんこそば」や長野県の「戸隠そば」と並ぶ“日本三大そば”のひとつです。
麺が黒っぽいのが特徴で、これは蕎麦の実の殻や甘皮まで挽きこむ「挽きぐるみ」という製法のため。
※白っぽいそばは実の中心部(更科粉/一番粉)を使用
そのため蕎麦本来の風味と旨みがしっかり感じられて、野趣あふれる味わいです。
食べ方は丸い器を三段重ねた冷たい「割子そば」と、温かいそばを茹で汁ごと丼ぶりに盛った「釜揚げそば」が主流。
「割子そば」はそばつゆを直接かけて、海苔・ネギ・大根おろし・もみじおろしなどの薬味を合わせて食べます。
「釜揚げそば」もそばつゆと薬味を入れて、お好みの味にして食べます。
島根のそば店はランチ営業のみのお店が多く、早めに売り切れることも多いため、確実に食べたいなら開店直後~正午過ぎまでに行くのがオススメです。
地域:出雲市・奥出雲町・松江市ほか
食べられるお店:出雲市 ・奥出雲町 ・松江市
③あご野焼き(島根県松江市)
「あご」とは魚のトビウオ(飛魚)のこと。
羽根のように長いヒレで海上を飛び跳ねる青魚で、新鮮な身は透き通るように美しい白身です。
そんな新鮮なトビウオをすり身にして、もち米で仕込んだ「地伝酒」や、塩・てんさい糖などで味付けして、金串に筒状に塗って焼き上げます。
トビウオの旬の6月~8月に野外で焼かれることが多かったため、「野焼き」と呼ばれるようになりました。
見た目は大きなちくわのようで、トビウオの風味と旨みがたっぷり!
そのまま切って食べたり、軽く炙って食べます。
「あご野焼き」はお土産屋さんやスーパーで一年中買えますが、生魚の旬には刺身もよく食べられています。
小魚を煮干しにした「あごだし」も島根の郷土食で、お土産としても販売しています。
地域:松江市・出雲市ほか島根県の海沿い
④さざえご飯
(画像出典:農林水産省「うちの郷土料理」)
島根県の海岸や島ではサザエがよく獲れます。
このサザエをご飯に炊き込んだのが、磯の風味が香る「さざえ飯」。
特に松江の沖にある隠岐(おき)諸島や、島根半島でよく食べられています。
サザエの旨味がしっかり染み込んでいて、箸が止まらない美味しさ!
作り方は酒・薄口しょうゆ・だし汁でシンプルに焚き上げるほか、にんじん・ゴボウ・薄揚げなどの具を入れることも。
白米に入れて炊く「さざえご飯の素」や、レンジで温めて食べる冷凍パックのお土産もあります。
隠岐では他にもさまざまな貝(ヒオウギ貝・イタヤ貝・ニィナ貝・アワビなど)の炊き込みご飯が食べられています。
地域:隠岐諸島・島根半島・島根県全域の沿岸部
⑤焼き鯖・焼き鯖寿司
(出典:農林水産省「うちの郷土料理」)
出雲と広島を結ぶ要衝・雲南市木次町の郷土料理。
まだ車や冷蔵庫がなかった時代、日本海で獲れたサバを内陸に運ぶ際に、生魚の鮮度が保てる限界地点の木次町で焼いて、さらに奥地へと運んでいました。
そんな歴史と風土を伝える名物料理です。
鯖1匹を豪快に串焼きにした「焼き鯖」と、半身を棒寿司にしたり、ほぐし身を散らし寿司に混ぜた「焼き鯖寿司」があります。
散らし寿司には山里らしく山菜を混ぜることが多く、タケノコ・フキ・ワラビ・干しシイタケ・人参などの具を入れて、彩りに錦糸卵・刻み海苔・山椒を散らします。
雲南市内の和食店で食べられるほか、焼き鯖専門のお惣菜店やオンラインショップもあります。
地域:雲南市木次町・三刀屋町ほか
食べられるお店:お食事処おくい ・石田魚店 ・長谷川鮮魚店 ・藤原鮮魚店・割烹・仕出し田丸屋ほか
⑥どじょう汁
(出典:農林水産省「うちの郷土料理」)
コミカルな「どじょうすくい踊り」 ※で知られる安来市の名物。
どじょうは「うなぎ一匹、どじょう一匹」と言われるほど栄養価が高い、伝統的なスタミナ食です。
※どじょうすくい踊りとは:島根県安来市の民謡「安来節(やすぎぶし)」の一節で、手ぬぐいを頭にかぶって鼻に一文銭をつけて踊る
安来市は全国有数のどじょうの産地!
清らかな山水を引いた山あいの養殖池で、米ぬか・魚粉などを与えて2~3カ月で育てるため、クセも臭みもない身と柔らかい骨が特徴です。
安来市では味噌汁・すまし汁・けんちん汁でよく食べられていて、柳川鍋・どじょう丼・唐揚げ・甘露煮なども人気です。
地域:安来市
食べられるお店:安来市のどじょう料理店
島根県西部の郷土料理 ~石見地方~
⑦へか焼き
(出典:大田市 産業振興部 産業企画課)
「へか」とは農機具の犂(すき)の先の金属部分のことで、これを鍋の代わりにして使ったことが語源になったと伝わっています。
「へか焼き」は“魚のすき焼き”とも呼ばれていて、大田市の郷土料理として親しまれています。
具は日本海の魚介類・旬の野菜・豆腐・コンニャクなど。
四季折々の魚を醤油・砂糖・水の割り下で煮て、その汁で野菜などを煮込みます。
日本海に面した大田市では、カレイ・穴子・ノドグロ・アンコウ・ハタハタ・甘鯛・ホウボウなどの魚介類が豊富に獲れます。
その出汁が染み出て、とても美味しい鍋になります。
地域:大田市
食べられるお店:金子旅館 ・武田旅館 ・平和亭 ※要予約
⑧うずめ飯
“山陰の小京都”津和野に伝わる郷土料理で、「日本五大名飯」※のひとつ。
セリ・ニンジン・シイタケ・鯛・かまぼこ・豆腐・焼き海苔・わさびなど、いろんな具が出汁をかけたご飯の中に埋まっています。
※日本五大名飯とは:宮内庁の全国郷土料理調査(昭和14年(1939年))で選ばれた、日本の代表的な郷土料理。 島根県の「うずめ飯」・東京都の「深川飯」・埼玉県の「忠七飯」・岐阜県の「さより飯」・大阪府の「かやく飯」の5つ。
(出典:農林水産省「うちの郷土料理」)
「うずめ飯」の由来は江戸幕府の倹約令で、贅沢を取り締まる役人の目をすり抜けるために、ご飯の下に具を隠したのが始まりだと言われています。
美味しさのポイントは薬味のわさびで、香り高い「本わさび」を添えるのがコツ!
このわさびも津和野の名物で、津和野の山あいには渓流の中に造られたわさび田がたくさんあります。
地域:津和野町
食べられるお店:津和野の郷土料理「うずめ飯」ランチで食べられるお店6選!
⑨芋煮
(出典:津和野町観光協会)
津和野の郷土料理は「芋煮」も有名!
津和野のシンボル・青野山の麓にある笹山地区の豊かな土壌で育った里芋は、ねっとりとした濃厚な食感。
それを炙った小鯛の出汁と薄口しょうゆで上品に煮て、柚子の皮を薬味に添えます。
山形県中山町・愛媛県大洲市と並ぶ「日本三大芋煮」のひとつで、津和野の秋を代表する味覚。
毎年10月第3日曜日には、この「芋煮」と地酒をふるまう「芋煮と地酒の会」が催されます。
お問い合わせ:0856-72-1771(津和野町観光協会/9:00~17:00(年中無休))
⑩鮎料理
(出典:高津川漁業協同組合)
島根県の西端を流れる高津川は、“日本一の清流”に8回も選ばれた清流の中の清流!
そんな高津川では極上の天然鮎が獲れます。
この鮎は清流の石に付いた良質なコケを食べて育つため、アユ特有のみずみずしい香りと上品な旨味がとても強くなります。
食べ方は塩焼き・味噌焼き・鮎ご飯・背ごし(若い鮎を骨ごと筒切りにした刺身)・鮎そうめん・鮎寿司・鮎雑煮・鮎うるかなどで、これらのフルコースが食べられるお店もあります。
高津川の流域には、こうした鮎料理を出すお店や旅館がたくさんあります。
地域:益田市・津和野町・吉賀町
漁期:6月上旬~9月末または10月上旬
写真提供:
農林水産省「うちの郷土料理」・大田市産業振興部産業企画課・高津川漁業協同組合・津和野町観光協会/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)