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”日本三大そば処”の出雲で、その伝統を独自に極めたそば職人のお店!
出雲そば。
長野県の「戸隠そば」や岩手県の「わんこそば」と並んで、“日本3大そば”と呼ばれている島根の郷土料理です。
その特徴は、蕎麦の実の殻や甘皮まで挽きこんだ黒っぽい麺。
そのため蕎麦本来の風味がしっかり生きていて、野趣あふれる力強い味わいです。
そんな‟出雲そば”の伝統を守りつつも、「いかに蕎麦本来の美味しさを引き出すか」に心血を注いでいるのが、ここ『中国山地蕎麦工房ふなつ』。
島根の松江で、そば一筋数十年の槻谷英人さんとそのご家族が、極上の手打ちそばを味あわせてくれます。
手間ひまかけて心をこめて、「more than best」な出雲そばを提供!
『ふなつ』のそばは、そばの美味しさを余すところなく味わえる「十割そば」。
小麦粉などの「つなぎ」を一切入れずにそば粉だけで打った麺で、最近増えてはいるものの、まだまだ珍しい存在です。
その理由は、そば粉だけで打った麺は切れやすいため。
そのため小麦粉などの「つなぎ」を混ぜた「二八そば」が主流で、「十割そば」だけを出すお店はいまだに少数派です。
それだけでも貴重なのに、さらに『ふなつ』は麺を3種類に打ち分けています。
・ザルそば用
・割子そば用
・温かいそば用
と、それぞれの調理方法に合うように様々な性質のそば粉を挽き分けています。
これは「手塩にかけて育てた蕎麦を、最高の美味しさで食べてもらいたい」という心意気のたまもの。幾重にも手間ひまをかけて、在来種の蕎麦の実力を引き出しています。
美味しさの秘密は畑でのそば作りから! 鮮度を落とさず蕎麦本来の味を引き出す。
そんな『ふなつ』のそばの美味しさの秘密は、収穫直後の玄ソバ(殻がついたそばの実)から徹底しているという「鮮度管理」です。
収穫したての新鮮さを保って酸化や乾燥を防ぐために、細心の注意を払っています。
「普通の『十割そば』がボソボソ・パサパサしがちなのは、玄ソバの管理に問題があるのでは、と考えています」
と、店主の槻谷英人さんは語ります。
「玄ソバの質が良くないと、どんなに打ち方にこだわっても良いそばは打てません。そのため冷蔵庫が無かった時代には、夏の暑さでそばの実が傷んでしまうため、松江のそば屋は夏はそばを出しませんでした」
さらにそば粉の挽き方と打ち方も重要で、これを長年の勘と手技で最良の加減になるように調整。
そして畑での土作りと種まきから取り組んだりと、とことん手間と情熱を注いでいます。
「出雲そば」の真髄がここに! 全国のそば通が食べに来るメニュー。
こうして供される『ふなつ』のそばは、一度食べると忘れられない味!
中でも人気のメニューをご紹介しましょう。
●千鳥割子 1000円 (定番メニュー)
出雲そば伝統の、三段重ねの丸い器で出される「割子そば」です。
※写真のお重は撮影のために広げています
具は「とろろ」、「錦糸卵・しいたけ・アナゴ・かまぼこ」、「うずら卵」の三種類で、一段ごとに違う味わいが楽しめます。
つゆを直にかけて具やそばと混ぜながら食べるのが、出雲流。
他の地域にはない食べ方で、出雲の食文化を実感できます。
●まいたけ天ぷらそば 980円 (平日限定)
粗挽きの全粒粉と、「丸抜き(殻を外した甘皮付きの実を挽いた粉)」を合わせた、少し細めの麺で味わう温かいそば。
そばのコシがしっかりしているため、奥出雲産の舞茸の濃厚な風味と、濃い目のしっかりとしたつゆとのハーモニーを堪能できます。
●そば屋の「たまご焼き」 450円 (定番メニュー)
「割子そば」のダシのみで味付けした、おそば屋さんならではの卵焼き。
来店するたびに注文する人もいるほどで、おそばにピッタリの味わいです。
ほど良い焼き目がついた卵の香ばしさと、ダシのこっくりとした味わいとのマッチングが絶妙!
ぜひ注文したいサイドメニューです。
その他にも、多数のメニューがあって季節限定のメニューもあります。
例えば出雲の冬の風物詩・「あつもりそば」は、粗挽きの全粒粉だけで打った力強い風味のそばに、とろろ芋と生玉子が入ったアツアツで通向けの一品。
そして新そばが熟成されて一番美味しくなるという1月~2月にだけ登場するメニューもあって、何度も通ってすべて食べ尽くしたくなります。
そばの味は畑から決まる! そば職人が種まきと土作りから取り組む理由。
昔ながらの本物のそば=「在来種」を、めくるめく料理で味あわせてくれる『ふなつ』。
全国のそば通を魅了し続けるその味は、畑作りと種まきから始まります。
「よく『蕎麦はやせた土地が向いている』と言われますが、私はそれは違うのではないか、と考えています」
と、店主の槻谷さん。
どうやら一般的なそばの通説には、大きな誤りがあるようです。
「美味しい蕎麦を作るには、適度に肥料をやって世話もきちんとしてと、『土作り』と栽培の『管理』がとても大事なんです。
昔はこうした施肥(せひ/肥料をやること)などの『土作り』がされていませんでした。
なのでそばにシットリ感を出すために、畑から手をかけて良い蕎麦を作れば、そば粉十割で打っても十分にモチモチした美味しいそばになります」
こうした発見から、「そば屋の店主」が自ら種をまき、粉に挽いて、そばを打つように。
全ての工程と手技が、槻谷さん自らが編み出したオリジナルなのです。
「最初は面倒でしたが、店ではそばを打って外では農作業をする、という切り替えが次第に心地良くなりました。
そんな自然との一体感や楽しさが、そばの味にも出ているのかもしれませんね」
種まきからそば打ちまで、すべてを一貫させたそば作り。
それらを意識して実践しているからこその、名店の味です。
「もっとも全てにおいて‟完璧”はありえませんので、日々試行錯誤して研鑽を積んでいます。
ですので『誰が召し上がっても絶対に美味しいおそばです』とは言えませんが、その分お客さんが食べてどう感じてくださるのかが楽しみです。
日々、その時々に出せる最良の味を目指しているので、ぜひ何度もおいでください」
と、槻谷さんは語ります。
『ふなつ』の開店は1971年(昭和46年)で、お父様が始めたお店を受け継いだ英人さんは、現在73歳。
奥様のきみ枝さんと、跡継ぎの長男・有祐さんの3人で『ふなつ』を営んでいます。
「息子は店に立つようになって今年で4年目ですが、私の手技をほぼ受け継いで、修業は一通り完了しました。私はそろそろ引退を考えていますが、現在のメニューや味は息子が引き継いでいく予定です」
‟出雲そば”の名店は、将来も盤石。
その味を求め続ける多くの人々を、これからも変わらずもてなしてくれるでしょう。
- DATA
中国山地蕎麦工房ふなつ
HP:なし
住所:島根県松江市中原町117-6
電話:0852-22-2361
営業時間:11:00~15:00
※そばが無くなり次第、閉店(およそ13:30頃)
休日:月曜・新年・GW・お盆
※12月31日は14時頃に閉店
客単価目安:1,000円~
取材協力・
写真提供:
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ライター:風間梢(プロフィールはこちら)