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小泉八雲旧居|『怪談』の作者が住んだ美しい庭の武家屋敷|島根県松江市

2024年6月13日

小泉八雲旧居 松江城のそばにたたずむ瀟洒な武家屋敷。

『怪談』で知られる明治時代の作家・小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが住んでいました。

松江で出会った妻セツと共に過ごした家は、彼の作品に大きな影響を与えました。
屋敷の三方を美しい庭に囲まれています。

【国指定史跡 小泉八雲旧居】
住所:島根県松江市北堀町315
電話:0852-23-0714

【開館時間】
4月1日~9月30日:8:30-18:30(受付18:10まで)
10月1日~3月31日:8:30-17:00(受付16:40まで)
休館日:年中無休

※館内メンテナンスのため年数回の休館日あり
入館料:大人310円/小・中学生150円
※各種割引あり(団体・障がい者など)

小泉八雲が愛した日本情緒あふれる屋敷

塩見縄手

小泉八雲旧居は、松江藩に仕えていた武士の屋敷が立ち並ぶ塩見縄手(しおみなわて)にあります。

日本の文化をこよなく愛した八雲は、「庭のある侍の屋敷に住みたい」と強く希望して、この家に移り住みました。

そんな小泉八雲旧居の一番の見どころは、母屋を取り巻く三方の庭です。
枯山水の素晴らしい観賞式庭園で、八雲はこれを眺めて作品にも著しました。

それから130年以上も経った今も、ほぼ当時のままの姿で保存されています。

出雲 八雲が旧居に移り住んだのは、1891年(明治24年)の6月。

その前年の1890年(明治23年)に英語教師として松江に赴任した八雲は、当初は宍道湖畔の借家に住みましたが、憧れの武家屋敷に引っ越して約5カ月間をここで過ごしました。

その後は熊本・神戸・東京に移り住んだものの、松江で過ごした日々と旧居の情景は、その著作に多大な影響を与えました。

展示 旧居の中には八雲が愛用した机のレプリカが置かれています。
(オリジナルは小泉八雲記念館に展示)

学生時代に左目を失明して、右目も強度の近視だった八雲は、特注の背の高い机で書き物をしました。

お堀 旧居があるのは松江城のお堀ばた。
塩見縄手(写真中央~右の道)と、お堀(写真左)をはさんだ向こうに松江城があります。

松江の中心部にあるのに、とても閑静で心洗われる空間。
八雲が愛した庭を眺めながら、その作品と人生に想いをはせてみませんか?

小泉八雲旧居で生まれた作品 ~「日本の庭」~

小泉八雲

八雲が見た旧居の庭の景色は、八雲の著書『知られぬ日本の面影』に収録された短編「日本の庭」に詳しく記されています。

これは八雲が日本に来て初めて著した本で、1894年(明治27年)に出版されました。

庭の木々や風景・生き物・庭石・石灯籠などについて情緒豊かに記されています。
八雲は特に広々とした縁側から眺める庭を好みました。

以下は現在も旧居で見られる庭のようすです。

①南側の庭

南側の庭

南側の庭

街の喧騒から隔絶された、わびさびが漂う静かな庭。

枯山水の庭で南西の隅にはシャチホコがあります。
この庭には見事なサルスベリの木があり、毎年7月下旬~8月末ごろまでピンクの美しい花を咲かせます。

②西側の庭

築山風の庭で苔が美しく、水をたたえた石鉢や灯籠があります。

③北側の庭

北側の庭

八雲のお気に入りの庭。
地面には玉石が敷きつめられていて、中央に小さな池があります。

池の中には小島があり、眺める方向によっては彼方に島が浮かぶ本物の湖のように見えます。

小島と池の周囲には、盆栽のように美しい松やツツジなどが植えられています。

北側の庭

池の中には生き物たちが住んでいて、夏の夕暮れにはカエルがにぎやかに合唱します。

このカエルを狙う蛇も訪れます。
蛇に食べられるカエルを可哀想に思った八雲と小泉家の人々は、しばしばカエルを助けたそうです。

旧居の庭 八雲は旧居の庭をこよなく愛し、情感たっぷりに描写しました。
ですが「日本の庭」には、それが間もなく失われてしまうだろう、という予想と嘆きも記されています。

八雲が来日した明治時代は、日本の近代化が急速に進んでいました。

そんな世情が伺えますが、幸い八雲が愛した旧居と庭は、当時の家主の根岸家の尽力によって、ほぼ当時のままで保存されています。

(写真:庭師による庭のお手入れ)

旧居の家主・根岸家と小泉八雲とのきずな

士族・根岸家の家

小泉八雲旧居は、旧松江藩士だった士族・根岸家の家でした。

八雲が絶賛した素晴らしい庭は、八雲に旧居を貸した根岸干夫(たてお)の父・根岸小石(しょうせき)によって造られました。

当時、根岸干夫は簸川郡(現在の出雲市)の郡長だったため、空いていた旧居を八雲に貸したのです。
干夫の長男の根岸磐井(いわい)が八雲の教え子だったため、そのご縁でした。

小泉八雲旧居

八雲が松江を離れ、1904年(明治37年)に没した後、根岸磐井は勤めていた日本銀行を辞めて松江に戻りました。

そして一部が改築されていた旧居を復元し、八雲が愛した旧居の保存に尽力したのです。

そのかいあって、小泉八雲旧居は今も往時の姿のままで残されています。
さらに1940年(昭和15年)には国の史跡に指定されて、今は松江市が管理しています。

(写真:南の庭を眺める根岸磐井夫妻)

小泉八雲旧居の春夏秋冬

小泉八雲旧居では、春夏秋冬ごとにさまざまな風景が見られます。
南と西の縁側はほぼ全面が明治時代の窓ガラスで、雨や雪の日でも風情ある景色を楽しめます。

また、八雲が「日本の庭」に記した虫の音(秋)や、カエルの鳴き声(初夏~夏)なども聞くことができます。

旧居の春

旧居の春

松江の長い冬が明け、庭の木々が芽吹きの季節を迎えます。
新芽の黄緑や常緑樹の緑が輝き、梅の花が春の先触れを告げます。

同時に赤い木瓜(ぼけ)の花が開き、庭を鮮やかに彩ります。
初夏が近づくとツツジの花も咲き始めます。

旧居の夏

旧居の夏

初夏になると庭の緑はいっそう濃くなり、どこからか現れたカエルが鳴いたり、池に飛びこんだりします。

北の庭の池には睡蓮や蓮が咲き、みずみずしい季節の到来を告げます。

南の庭

夏の盛りには南の庭にサルスベリの花が咲き、鮮やかなピンクの花々が8月の終わりごろまで見られます。

カエルのほかにもヘビや昆虫など、旧居の豊かな自然に惹かれた生き物たちが次々と訪れます。

旧居の秋

秋は虫を好んだ八雲の待望の季節!

日が暮れると鈴虫やマツムシ、コオロギ、クツワムシなどが澄んだ鳴き声を響かせます。

旧居の冬

旧居の冬

松江の冬は雪がよく降ります。
雪をこんもりかぶった庭の木々が和の情緒を漂わせます。

八雲が旧居に住んだのは6月から11月までの5カ月間だったため、この景色は見られなかったかもしれません。
ですが、なぜか八雲の作品の息吹を感じます。

城山(じょうざん)稲荷神社 八雲は松江城にある城山(じょうざん)稲荷神社までよく散歩しました。

無数のお狐様が並ぶ境内は、『怪談』などの著作を思わせる神秘的なムード。
八雲はこの神社の石の狐たちがとても好きだったそうです。

宍道湖 松江のシンボル・宍道湖もまた八雲が好んだ風景でした。

当初は宍道湖の湖畔に住みましたが、その後移り住んだ旧居の庭の美しさは、宍道湖が見えなくなったことを補って余りあるほど素晴らしい、と「日本の庭」に記しています。

小泉八雲記念館 小泉八雲旧居の隣には、八雲の作品と生涯を紹介している「小泉八雲記念館」があります。

お得な2館共通券(小泉八雲記念館・小泉八雲旧居)で両方入場できるので、ぜひ一緒に訪ねてみましょう!

小泉八雲旧居

- DATA
国指定史跡 小泉八雲旧居

HPhttps://www.hearn-museum-matsue.jp/residence/
住所:島根県松江市北堀町315

電話:0852-23-0714

【開館時間】
4月1日~9月30日:8:30-18:30(受付18:10まで)
10月1日~3月31日:8:30-17:00(受付16:40まで)
休館日:年中無休
※館内メンテナンスのため年数回の休館日あり
入館料:大人310円/小・中学生150円
※団体割引あり(20名以上)
※障がい者手帳、療育手帳などの所持者と介護者1名は無料
※お得な2館共通券(小泉八雲記念館・小泉八雲旧居)あり



- DATA
小泉八雲記念館

HPhttps://www.hearn-museum-matsue.jp
住所:島根県松江市奥谷町322

電話:0852-21-2147

【開館時間】
4月1日~9月30日:8:30-18:30(受付18:10まで)
10月1日~3月31日:8:30-17:00(受付16:40まで)
休館日:年中無休
※館内メンテナンスのため年数回の休館日あり
入館料:大人410円/小・中学生200円
※団体割引あり(20名以上)
※障がい者手帳、療育手帳などの所持者と介護者1名は無料
※お得な2館共通券(小泉八雲記念館・小泉八雲旧居)/3館共通券(松江城天守・小泉八雲記念館・武家屋敷)あり

取材協力・写真提供:小泉八雲旧居・小泉八雲記念館/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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