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黄泉比良坂|この世とあの世の境界? 古代出雲神話のミステリースポット

2023年12月5日

松江の歴史スポット 「黄泉の国と現世の境」と言い伝えられている、松江の歴史スポット。

古代出雲神話の夫婦神イザナギ・イザナミのエピソードの舞台で、イザナギ (伊邪那岐命)が火の神を生んで亡くなってしまった妻イザナミ (伊邪那美命)を追って、訪ねた黄泉の国から出てきたところ、という伝説があります。

真昼でも静かな木立の中にあり、黄泉の国の住人がすぐ側にたたずんでいるかのような気配が漂っています。


住所:島根県松江市東出雲町揖屋 2376-3
お問い合わせ:0852-55-5840 (松江市東出雲支所 地域振興課)
見学時間:自由
駐車場:あり(5台)

黄泉比良坂 (写真提供:公益社団法人 島根県観光連盟)

黄泉の国と現世の境 神話の舞台となった祈りの場

シンと静まり返った木立の中。
うっそうとした木々に覆われた空間に、いくつもの大岩がたたずんでいます。

ここは「黄泉比良坂(よもつひらさか)」

古代出雲神話に語られた「この世とあの世の境界」で、観光客でにぎわう松江の一画にありながら、常に静寂に包まれています。

大岩

場所は松江市東出雲町の揖屋(いや)地区。
国道9号から約300m南に下った山のふもとにあります。

しめ縄がかけられた石柱をくぐり抜け、静かな木立の中を少し歩くと、小さな空地にいくつもの大岩が見えます。

人の背丈よりも高い大岩は、まるでイザナギが黄泉の国の入口をふさいだ扉のよう!
うち2つの大岩の間には道のような空間があり、イザナギ・イザナミ伝説との関わりを強く感じさせます。

静かにマナー良く見学しましょう 神話の史跡を訪ねる人、懐かしい人の気配を感じたくて訪れる人など、さまざまな人がいろんな想いを抱いて訪れる場所。

見学は自由で特別なルールはないですが、静かにマナー良く見学しましょう。

※山の中への立ち入りは危険なのでお控えください

勇気を与えてくれる場 古事記には、「黄泉比良坂」のエピソードを経て、悲しみを乗り越えるイザナギの姿が描かれています。
このことから、「黄泉比良坂」は過去の想いを乗り越えて、次のステージに進もうとする人々に勇気を与えてくれる場とも言われています。

癒えない悲しみや亡き人への想いを抱えている人は、「黄泉比良坂」を訪れてみてはいかがでしょうか?

亡き人への手紙を天国へ届ける「天国への手紙ポスト」

「黄泉比良坂」の大岩の側には、小さなポストがあります。
これは亡き人への想いを届けてくれる「天国への手紙ポスト」

懐かしい人へのメッセージをつづった手紙を入れれば、毎年6月にポストを管理している東出雲ライオンズクラブが、祝詞(のりと)とともにお焚き上げしてくださいます。

天国への手紙ポスト (写真提供:公益社団法人 島根県観光連盟)

このポストができたきっかけは、かつてタクシー運転手だった東出雲ライオンズクラブの元会長の森山さん。
2011年の東日本大震災以来、「黄泉比良坂」に慰霊のために訪れる人々が増えたそうです。

亡き人に想いをはせる人々を送迎するうちに、森山さんは「残された人たちの心を癒したい」と、ポストの設置を考案。

そして「黄泉比良坂」を管理している「黄泉比良坂神蹟保存会」の協力を得て、2017年に「天国への手紙ポスト」が設置されました。

人ならぬ力を感じます (写真提供:公益社団法人 島根県観光連盟)

不思議なことに、毎年6月のお焚き上げの日は、梅雨どきにも関わらずいつも晴れるそうです。
天気予報で雨と言われた日でも晴れたそうで、人ならぬ力を感じます。

ひょっとしたら、亡き人々も愛する人々からの手紙を待ちわびているのかもしれません。

黄泉比良坂 「黄泉比良坂」まで行けない人は、「東出雲ライオンズクラブ事務局」への郵送でもお手紙を受け付けています。

宛先:699-0109 松江市東出雲町錦浜583の18 東出雲ライオンズクラブ 「天国への手紙」

揖夜神社

「黄泉比良坂」とあわせてお参りしたい! イザナミ神ゆかりの「揖夜神社」

「黄泉比良坂」を訪ねるなら、ぜひ一緒にお参りしたいのが「揖夜(いや)神社」
主祀神はイザナミ (伊邪那美命)で、「黄泉比良坂」と縁の深い神社です。

「日本書紀」にも名が記されている由緒正しい古社で、戦国武将の大内義隆や尼子晴久、毛利元秋が深く信仰していました。

また、出雲国造(いずものくにのみやつこ/かつて出雲地方を治めていた氏族)ゆかりの「意宇六社(熊野大社・神魂神社・八重垣神社・六所神社・真名井神社・揖夜神社)」のひとつでもあり、これらをお参りする「意宇六社巡り」が江戸時代より盛んに行われていました。

揖夜神社

本殿は‟大社造り”と呼ばれる様式で、出雲大社と同じ建築様式。

ですが御神座(ごしんざ/御神体がある場所)は、出雲大社とは逆の方向を向いているのが特徴です(左から右向き)。

そして本殿の中には、華やかな色彩で揖夜神社にまつわる神事などが描かれています。

住所:島根県松江市東出雲町揖屋 2229
電話:0852-52-2043
アクセス:JR揖屋駅から徒歩10分/黄泉比良坂から徒歩12分
駐車場:あり(10 台)


お祭りは華やか! ふだんはしめやかな雰囲気の「揖夜神社」ですが、お祭りは華やか!

毎年8月28日に行われる船神事「一ツ石神幸祭(ひとついししんこうさい)」と、五穀豊穣を祈る「穂掛祭(ほかけまつり)」は、大勢の人々でにぎわいます。

揖屋地区の氏子が陸船で「揖夜神社」を目指して練り歩く「陸船行列」は、揖屋の夏の風物詩!
賑やかな祭ばやしと幻想的な鈴成提灯が、夏の夜を彩ります。

黄泉比良坂

悲しくも美しいイザナギ・イザナミ神話 「黄泉比良坂」が舞台の悲恋物語

「黄泉比良坂」を舞台にしたイザナギ・イザナミ神話は、日本最古のラブストーリーとも言われています。

その物語は高天原の神々から‟国造り”の命を受けたイザナギ・イザナミ夫婦が、日本の国土を造って降り立つところから始まります。

二神は日本を守る神々をたくさん生み出しますが、最後に生まれた火の神によって、母のイザナミが大火傷を負ってしまいます。
そしてほどなく亡くなってしまい、彼女を恋い慕うイザナギは、黄泉の国におもむいて愛する妻を連れ戻すことにしました。

彼女を恋い慕うイザナギ

しかしイザナミは、すでに黄泉の国の食べ物を口にして黄泉の国の住人となっていたのです。
それでも一緒に帰りたいと懇願するイザナギに、イザナミは黄泉の御殿にこもったままで、

「黄泉の国の神々に、地上に戻れるように頼んでみます」

と答えました。

「ですが、私が戻ってくるまでは決して中に入ってはいけません」

とも。

決して中に入ってはいけません

しかし、待てども待てどもイザナミは戻りません。

しびれを切らしたイザナギは、とうとう約束を破って御殿の扉を開けてしまいました。

するとそこには、変わり果てたイザナミの亡骸が横たわっていました。

大きな岩で黄泉の国の入口をふさぐ

驚いて逃げ出したイザナギを、約束を破られて怒ったイザナミが、黄泉の国の鬼たちを率いて追いかけます。

イザナギは髪飾りを葡萄に、櫛をタケノコに変えて、追いかけてくる鬼たちの気を引いてを足止めしようとします。
ですがそれでも鬼たちは追いかけてきます。

ついに「黄泉平良坂」までたどり着いたイザナギは、木になっていた桃を鬼たちに投げて追い払おうとしますが、ついにイザナミに追いつかれてしまいました。

そこで大きな岩で黄泉の国の入口をふさいで、イザナミが出てこられないようにしました。

水に入って身を清めました

こうして無事に黄泉の国から逃げ帰ったイザナギは、水に入って身を清めました。

すると左目から太陽神のアマテラスオオミカミ(天照大神)が、右目から月の神のツクヨミノミコト(月読命)が、鼻からはヤマタノオロチ退治で有名なスサノオノミコト(須佐之男命)が生まれました。

こうして神話だけでなく、日本の歴史においても重要な役割を果たす「三貴神」がそろったのです。

古代の神秘とロマン

そしてイザナギの妻のイザナミは、女性の守り神として崇められるようになりました。

日本最古のラブストーリーの舞台で、日本の始まりとも関わりが深い「黄泉比良坂」
この世とあの世の境界で、古代の神秘とロマンを感じてみませんか?

今も神話の気配が漂っています 「黄泉比良坂」がある松江市東出雲町には、イザナギ・イザナミ神話にまつわる地名がいっぱい。

「黄泉比良坂」の別名の「伊賦夜坂(いふやさか)」や、イザナギが黄泉の国に行ったイザナミの後をつけていった「付谷」、黄泉の国の鬼たちに追われた「追谷坂」など、今も神話の気配が漂っています。

黄泉比良坂

- DATA
黄泉比良坂(よもつひらさか)

HPhttps://www.kankou-shimane.com/destination/20332

住所:島根県松江市東出雲町揖屋 2376-3

お問い合わせ:0852-55-5840 (松江市東出雲支所 地域振興課)
見学時間:自由
アクセス:JR 山陰本線「揖屋駅」より車で 5 分/徒歩 20 分
駐車場:あり(5台)

取材協力・ 写真提供: 松江市東出雲支所地域振興課・公益社団法人 島根県観光連盟/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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