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可部屋集成館/櫻井家住宅・庭園|奥出雲のたたら製鉄を指揮した鉄氏頭取の文化遺産

2023年12月10日

櫻井家 櫻井家とは、奥出雲の「たたら製鉄」を指揮していた「鉄師頭取」。
その中でも松江藩の‟鉄師筆頭御三家”と呼ばれていた、3つの名家のうちのひとつです。

鉄師筆頭御三家とは:田部(たなべ)家・櫻井(さくらい)家・絲原(いとはら)家。いずれも「たたら製鉄」を大規模に営み、奥出雲の産業・文化・教育の発展をもたらした

そんな櫻井家のお屋敷と歴史資料館が、奥出雲ののどかな山里にたたずんでいます。
江戸時代に建てられた大邸宅と、たたら製鉄にまつわる貴重な歴史資料や美術品・工芸品などの展示は必見!

敷地内には美しい日本庭園と風情あふれるそば処もあって、江戸時代のような風景を楽しめます。

住所:島根県仁多郡奥出雲町上阿井1655
電話:0854-56-0800
営業時間:9:00~16:30(入場16:00まで)
休館日:月曜(祝祭日の場合は翌日)・12月中旬~3月中旬

櫻井家住宅

貴重なたたら製鉄の歴史資料と、鉄師頭取のお屋敷

「可部屋集成館」「櫻井家住宅・庭園」があるのは、島根県の奥出雲町。
この地では、約1400年の昔から砂鉄と木炭による鉄づくりが行われてきました。

そして江戸時代になると、松江藩に任ぜられた「鉄師」たちによって、この「たたら製鉄」がいっそう盛んに。

それを指揮して「鉄師筆頭御三家」と呼ばれるまでに栄えたのが、櫻井家です。

歴史資料

「櫻井家住宅」は櫻井家のお屋敷で、「可部屋集成館」は貴重な歴史資料や文化遺産を展示する資料館。
※「可部屋」は櫻井家の屋号

460平方メートルもの広大な敷地の中に、たたら製鉄の資料や文献、櫻井家を訪れた文人墨客たちによる美術工芸品・調度品・武具など、約4,500点もの品々を収蔵・公開しています。

奥出雲とたたら製鉄の歴史にひたれる、風情たっぷりの空間です。

国の重要文化財 江戸時代に建てられた築約300年の「櫻井家住宅」

松江藩の歴代藩主が領地を見回る際に泊まった「本陣宿」でもあり、国の重要文化財と、島根県の有形文化財に指定されています。

立派な母屋は元文3年(1738年)に建てられたもので、敷地内で最も古い建物は享保20年(1735)に建てられたもの。

見事な日本庭園 1803年に作られた見事な日本庭園
国の名勝に指定されていて、紅葉の名所としても知られています。

‟松江藩の中興の祖”と呼ばれた名君・松平不昧(ふまい)公が「岩浪」と命名した滝が流れていて、そのせせらぎと緑豊かな奥出雲の風景が合わさって、染み入るような風情を感じられます。

そば処「清聴庵」 櫻井家の敷地内にあるそば処「清聴庵」
そば粉と水だけで打った十割蕎麦が自慢で、そば粉は奥出雲町の在来種の「猿政小そば」100%!

※在来種とは:その土地で昔から栽培されてきた独自の品種。品種改良された蕎麦よりも味や風味が濃い。

そば粉は櫻井家の水車小屋で挽いていて、とてもキメ細かくてなめらかな口当たり。
十割蕎麦にありがちなボソボソ感がなく、モチモチとした美味しさです。

※水車挽きのため、1日に提供できるそばの数が限られています

可部屋集成館

櫻井家とたたら製鉄の歴史を物語る歴史資料館 ~ 可部屋集成館 ~

「可部屋集成館」には、櫻井家に代々伝わる歴史資料や美術工芸品が展示されています。

古くは江戸時代から収蔵されてきた貴重な品々で、どれも「たたら製鉄」と奥出雲の歴史を物語る貴重な文化遺産。

ここでしか見られないものばかり!

「たたら製鉄」の道具や古文書、松平不昧公直筆の掛け軸、櫻井家始祖の戦国武将・塙団右衛門(ばんだんえもん)にまつわる甲冑や刀剣、櫻井家に逗留した南画家(中国の南宗画の流れを汲む山水画家)・田能村直入の作品などで、ここでしか見られないものばかり!

春・夏・秋の年3回展示替えがあり、訪れるたびに新たな発見があります。

季節によって移り変わる櫻井家の景観と共に、奥出雲の歴史と風情を感じられます。

奥絵師 狩野派~紅葉を愛でる 2023年の秋季展のテーマは、「奥絵師 狩野派~紅葉を愛でる」。

狩野派(かのうは:室町時代から江戸時代にかけて、幕府の御用絵師として筆をふるった絵師の集団)による掛け軸やふすま絵、櫻井家の歴代当主が愛用した野遊びや紅葉狩りの道具、松江藩主をお迎えした際に使われた御成道具(調度・食器など)等を展示しています。

刀剣や甲冑 戦国武将の末裔ならではの刀剣や甲冑も展示。

櫻井家の景観 松江藩7代藩主の松平不昧公をはじめ、歴代の松江藩主が愛でた櫻井家の景観。
特に秋の紅葉は素晴らしく、絵に描いたようなわびさびの境地!

これら四季折々の風景と共に、季節に合わせた企画展を楽しめます。

奥様が語る櫻井家

櫻井家の歴史を奥さまから聞ける! ~ 奥さまが伝える「櫻井家の魅力」とお茶のおもてなし ~

「櫻井家住宅」「可部屋集成館」に行くなら、ぜひ参加してみたいのがこの体験プラン。
櫻井家14代目当主の奥さまから、櫻井家の歴史や奥出雲の逸話を聞かせてもらえます。

最初に「可部屋集成館」を見学してから、「櫻井家住宅」に移動。
普段は入れないお座敷に上がらせていただき、奥さまが手ずからご用意したお抹茶と和菓子をいただきます。

奥出雲の優雅なお座敷で、奥様が語る櫻井家の歴史に耳を傾けるひととき。

まさに非日常の、櫻井家でしかできない体験です。

お抹茶 森閑とした奥出雲の山あいで、歴史ある「鉄師頭取」のお座敷に招かれてお抹茶と和菓子をいただく体験。

奥出雲ならではの、またとない想い出になりそう!

TBSドラマ「VIVANT」の聖地

TBSドラマ「VIVANT」の聖地でもある! ~「櫻井家住宅」と奥出雲町のロケ地 ~

「櫻井家住宅」は、2023年放映のTBSドラマ「VIVANT」のロケ地でもあります。

堺雅人さんが演じた主人公・乃木憂助のふるさととして登場し、主人公の父親役の役所広司さんが、奥出雲の「たたら製鉄」と米作りについて語るシーンがあります。

※奥出雲町は‟お米の西の横綱”と呼ばれる「仁多米(にたまい)」の名産地!

奥出雲町

乃木家は櫻井家と同じく「たたら製鉄」を営んでいて、「たたら製鉄御三家」だったという設定。櫻井家や奥出雲町の歴史と重なるシーンも多いので、「VIVANT」のファンはぜひ訪れてみて!

「VIVANT」のロケ地巡りとあわせて、櫻井家の文化や歴史にふれる旅を楽しめます。

また、「櫻井家住宅」では乃木家の家紋が入った「乃木家のクッキー」をお土産に販売しています。

鬼の舌震 奥出雲町には、他にも「VIVANT」のロケ地になった場所が2カ所あります。

ひとつは若かりし頃の乃木卓(主人公・乃木憂助の父親)が野外で勉強するシーンが撮影された「鬼の舌震(おにのしたぶるい)」。

巨岩や奇岩が連なる大渓谷が2.3kmも続く、中国地方屈指の景勝地!
春の雪解け、夏の新緑、秋の紅葉と四季折々の自然美が見事です。

舌震”恋“吊橋 鬼の舌震」の遊歩道はバリアフリーで、車イスやベビーカーでも通れます。

ただし冬(12月下旬~2月下旬)は最高気温がマイナスになる日もあり、雪が積もる日も多いため、散策は春~秋がおすすめ!

高さ45m・長さ160mの「舌震”恋“吊橋」

大原新田(おおばらしんでん) もうひとつの「VIVANT」ロケ地「大原新田(おおばらしんでん)」
この棚田沿いの道をパトカーが走るシーンが撮影されました。

江戸時代に造られた大規模な棚田で、「日本棚田百選」にもなった景観は必見!

普通、棚田は急斜面に造られるため、1枚1枚が狭くて石垣で補強されていますが、「大原新田」は平地の田んぼと同じく土の畝(うね)でできています。

このことから、当時の奥出雲の土木技術が非常に高かったことがうかがえます。

棚田 奥出雲にたくさんある棚田では、今でも美味しい「仁多米」が作られています。

特に「大原新田」がある馬木(まき)地区の仁多米は、標高の高さと寒暖差による味の奥深さが高評価!

かつては「たたら製鉄」の砂鉄が掘られていた跡地で、そこを棚田として再生するという、奥出雲ならではの「資源循環型農業」のシンボルでもあります。

馬木地区で最も標高が高い大峠地区の棚田/「大原新田」とは別の棚田です

戦国武将がルーツ

戦国武将がルーツの櫻井家 江戸時代から今に至る歴史が奥出雲に息づく

櫻井家のご先祖は、戦国武将の塙団右衛門(ばんだんえもん)です。

徳川家と豊臣家の決戦・大阪夏の陣で討ち死にしたのちに、その嫡子が広島の「可部郷」に移り住み、「たたら製鉄」を営むようになりました。

さらにその子の直重が、出雲に移り住んで屋号を「可部屋」と改めたのが、櫻井家の始まり。
そして直重が名鉄「菊一印」を創り出し、松江藩から「鉄師頭取」を拝命しました。

江戸時代から今に至るまで、変わらず奥出雲にたたずむ歴史ある名家。
そのお屋敷と文化遺産の数々は、奥出雲と「たたら製鉄」の悠久の歴史を物語ってくれます。

奥出雲と「たたら製鉄」の悠久の歴史

- DATA
可部屋集成館/櫻井家住宅・庭園

HPhttp://kabeya-syuseikan.com/
Facebookhttps://www.facebook.com/kabeyasyuseikan/?locale=ja_JP

住所:島根県仁多郡奥出雲町上阿井1655

電話:0854-56-0800
営業時間:9:00~16:30(入場16:00まで)
休館日:月曜(祝祭日の場合は翌日)・12月中旬~3月中旬

<入館料>
■可部屋集成舘・櫻井家庭園 共通券
一般 1000円 / 高校・大学生 650円 / 小・中学生 450円
■可部屋集成舘のみ
一般 700円 / 高校・大学生 400円 / 小・中学生 300円
■櫻井家庭園のみ:一般 400円 / 高校・大学生 300円 / 小・中学生 200円

取材協力・写真提供:奥出雲町観光協会・有限会社 藤本米穀店/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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