料理家、谷尻直子さんのコラム&レシピ #006
秋の楽しみと秋から冬への養生
エポティブにお集まりの皆様こんにちは! 料理家の谷尻直子です。
秋が深まる11月、これからやってくる冬に備えた養生をしたい月であり、ゆずに引き続き、秋の味覚であるいくらを自家製で醤油漬けにするなど、自分自身の「秋の食の楽しみ」を作りたい季節です。
- 秋の食の楽しみ:いくらの醤油漬けで季節の味覚を堪能しよう!
- 鮭の卵の魅力:秋にしか味わえない生筋子の魅力とは?
- いくらの栄養成分:タンパク質やビタミンミネラルをバランスよく摂ろう!
- いくらの醤油漬けの楽しみ方:自家製のいくらを新米のごはんと一緒に味わおう!
今日お届けする季節の手仕事は「いくらの醤油漬け」。
回るお寿司屋さんも、回らないお寿司屋さんも、「いくら!」と伝えれば、酢飯に乗って、多くは軍艦巻きとなって手元にやってきます。一年中。
しかし、知らない方が多い事実なのですが、鮭は秋しか卵を持ちません。
ですので、春や夏に食べるあれらは、実はお寿司屋さんが秋に仕込んで冷凍保存していたものなのです。鮭の卵を食べる文化は、ロシアから伝わった説が濃く、ロシア語で魚卵のことを総じて「ikra」と呼ぶそうです。ただ、鮮度重視で生食する文化の強い国だからか、日本では国産の生筋子以外はそうそう見かけません。
さて、その、鮭の卵は、卵巣膜に包まれて「筋子」という名前で売られています。筋子が売られているのを見かけたことはあるけど、スーパーで素通りしていた!とおっしゃる方が意外に多いのですが、ここでお伝えする漬けだれを用意して「生筋子」を買いに行ってください。3時間後から美味しすぎてほっぺが落ちそうな「いくらの醤油漬け」が楽しめます。
そして、この手仕事は食べるのが楽しみなだけではなくて、作業もとっても楽しいんですよ!お子さんがいらっしゃる方は、ぜひお子さんと作業してみてください。思い出となるばかりでなく、「日本の旬を知り、素材を知る」食育となること間違いなしです。
いくらの醤油漬け
【作りやすい分量 (1/2腹分)】
- ・生筋子 1節(1/2腹 1本のこと)
- ・本みりん 70cc
- ・醤油 50~60cc
【下準備】
- いくらを洗うための湯を沸かす。
- 塩を準備する。
- 漬け込む容器(琺瑯など)を用意する。
- 小鍋、ザル、ボウル、ペーパーを出しておく。
【作り方】
- 鍋にみりんを入れて中火にかけ、煮詰める。とろみがついたらOK!(50ccを目指します)
- 容器に入れ、醤油を合わせ、味見をする。(少し甘めくらい◎)
- 冷ましている間に筋子をほぐす。まな板に乗せて泡立て器でこそげる。
- 70℃程度の2リットルの湯に塩を大1くらい入れて溶かし、③を入れて泡立て器やゴムベラで優しくかき混ぜる。2回目から45℃程度でOK! 皮や血合を丁寧に取り除く。
- ザルに上げて最終チェックを行なって10分おき、ペーパーなどでザル底面を拭き取り、液に漬ける。
- 3時間以上冷蔵庫で浸透させたら浅浸かりのものは食べられる。(鮮度の良いもので日持ち5日程度)
【コツとポイント】
- ◎生魚同様に血の部分が臭みの原因となるため、それを取り除く
- ◎浸透圧によって皮が固くなるのを防ぐために塩水(3%程度)にすると良い
さて、気になる栄養成分について、
いくらの主成分はタンパク質、そしてビタミンミネラル類ではA、D、Eとなっています。Aは約50gで1日推奨摂取量を超えます。Dについては約20gで、Eについては約75gで1日推奨摂取量となる計算ができます。
ただし、やはり、食事というのはバランスです。
生食、加熱食、穀物、緑黄色野菜、根菜、きのこ、実物(ナッツや胡麻など)、果物をバランスよく摂ることが一番です。1食でそれを叶えようとするとかなり献立組みを圧迫するので、1~2日、つまり3~6食でそれらをバランスよく摂ろう!という目標がいいと思います。また、肉、魚、肉、魚、と、夕飯の献立を交互にするのもおすすめです。
さて、話を戻しますが、いくらの醤油漬けを作ったら、まず第一に食べたいのはやはり、いくらご飯!炊き立てのごはんの上に、自家製だからこそ贅沢にたっぷりとかけていただきましょう!
その時、ひと手間かけてゆずの皮を削ってあげると、ゆずの香りが爽やかに抜け、いくらが口の中でぷちぷち弾けた後、まったりと溶け出す食感に余韻としてのコントラストを与えてくれ、感動の体験になると思うので、ぜひ、ゆずも購入していくらの醤油漬け作りに挑んでください。いくらご飯を楽しんだ後は水菜といくらのパスタなども最高ですね。
ゆずは、皮を使ったら余る中身を有効活用すべく、「ゆず果汁を使ったすし酢」はいかがでしょう。次号、「柑橘を使用したすし酢」のレシピをお届けします。ゆずは、皮も果汁も使い切ることができますので、躊躇することなく入手してくださいね。
すし酢は、ご飯と合わせるだけではなく、茗荷や蓮根、人参の銀杏切りなどをつけてもとっても美味しいので、ぜひお試しください!
「いくらご飯、蓮根と人参のすまし汁、茗荷の甘酢漬け」なんていう献立はいかがでしょう。翌日は、蓮根と人参を甘酢漬けにして酢飯に合わせ、いくら乗っけちらし寿司を中心にするのもいいかも。副菜には、小松菜ときのこのお浸しなんかもいいですね。
根菜に多く含まれる食物繊維は腸の善玉菌を増やし、お掃除をしてくれますし、秋冬は根っこ野菜がたくさん登場しますので、上手に取り入れて美肌や腸活に活用してください。
ただ、この季節は冷たい飲み物を避けて、胃腸が冷えてしまうのを防ぎ、その上でしっかりといい油を摂って食物繊維を摂ることが重要です。胃腸が冷えれば内臓が運動できなくなり、腹痛を招くことになりかねず、油が不足している状態で食物繊維を摂り過ぎると、流れが悪くなって負担が大きいのです。
秋から冬にかけては、乾燥で喉をやられてしまう方が多くなります。卵や柿、白木耳、胡麻やゆり根などで、内面の潤いを意識しながら過ごしましょう。
それでは次号をお楽しみに。
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谷尻直子 Tanijiri Naoko
東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。