料理家、谷尻直子さんの コラム&レシピ #002
菊の花で彩る、秋の味わいと日本の伝統
エポティブにお集まりの皆様こんにちは!料理家の谷尻直子です。
9月は重陽の節句(ちょうようのせっく)と、秋分の日がある月です。8月はお盆でしたので、お墓参りに足を運んだ方も多くいらっしゃるかもしれませんね。さて、お墓参りに必須なお花と言えば菊の花ですね。
重陽の節句は、9月9日に無病息災や長寿、子孫繁栄を願う中国伝来の行事で、菊の花や菊酒、栗ごはんなどを用いて祝います。 陽の日の最大値である9が重なる日を「重陽」と呼び、節句のひとつにしたといわれています。 菊には延寿の力があるとされ、菊を用いて厄払いや長寿祈願をしました。
シェイプの細い花片がたくさん連なる形状の菊は見て美しいですが、食用として育てられているそれは生食もでき、さっと茹でておひたしやあしらいにも活用出来ます。
天皇家の紋として、古くからの日本の象徴を彩ってきた菊の花。五十円玉の裏面を見てみてください。やはり菊の紋様があり、日本人としては菊の花は、食卓での使用経験を持ちたい食材でもあります。
元々は観賞用として人気だった菊の花ですが、中国の生薬としては、菊花は乾燥させた花片をお茶として飲むのが昔から日常的に行われてきたようで、薬膳では目の疲れを取るとされています。現代では、スマートフォンやデバイスと毎日何時間も向き合うことから、菊花の食用は、日本でももっと取り入れても良い文化かもしれませんネ。
今は普通のスーパーでも万能ネギや生姜などの薬味ゾーンにわさびと並んで、菊の花が陳列されていることが珍しくありません。通い慣れたスーパーでは、慣れた動きでスーパー内を闊歩して、必要なものをカゴに入れていくと言うことが多いかと思いますが、コラムをご覧いただいたら、ちょっと薬味の棚で足を止めて菊花を探してカゴにポイ、と入れてみてください。
菊の花のおひたしという名前はよく聞いたことがあるかもしれませんが、実際に自分で作ったことがある方は少ないでしょうかね?菊の花は、ガクで束なっていますが、ガクから外し熱湯で約10から30秒ほどで火が通りますので、さっとざるにあげて冷水を通し、すぐに優しく手で水気を絞るのがオススメです。
だし汁、薄口醤油、少量の煮切みりんで調味した「だし醤油」に浸すと、菊花のおひたしになります。
菊花は、大体8個から10個1パックに入っていることが多いので、2つは生でいただくことにし、残りを茹でてみるのはいかがでしょうか?生の2つはお刺身の間間に忍ばせ、コールドプレスオリーブオイルやえごま油など、お好きなオイルと白ゴマ、そしてぽん酢で、黄色が華やかなアペタイザーが完成します。
普段からヘルシーライフを心がけている方も、このように日本の伝統文化とか絡めながら、食材入手と卓上のしつらえをアレンジすると、次の世代にも日本の伝統文化が繋がれるさらに豊かな食卓になるのではないかな?と思います。
生薬としての目の疲れへの期待のほか、紫蘇やわさびなどと同様に、解毒作用もあるとされます。成分中は、ほぼ水分ではあるものの、食物繊維が2.6%含まれ、そのほかビタミンEやB1などが特徴的です。
生の菊花、茹でた菊花、ともに不溶性食物繊維で体のお掃除ができるだけではなく、目に美しく、食べる事でご先祖さまへの感謝の気持ちが湧いてくるのが素晴らしいですね。感謝の気持ちで食卓を囲めるというのは、ポジティブの循環そのものですネ。
日常に昔ながらの養生を文化と共に
1) 菊花を生で
ほたてのお刺身と3分程度茹でて石づきを取った白木耳を手でちぎり、柚子胡椒と酢と蜂蜜を混ぜてたれにしてかける。9~10月は青ゆずの季節ですので、ぜひ季節の食材を楽しみましょう!
急須に菊花を入れ、熱湯を注いで5分程度蒸らすと、フレッシュ菊花茶になります。蜂蜜もあいます。お試しくださいませ。
2) 菊花の茹で方
菊花を茹でる時はがくから外して熱湯で15秒くらい。しんなりしたらすぐに氷水か流水に当ててしっかり搾ります。野菜と同じく、しっかり絞る、が大切なポイント。醤油洗いなどの昔ながらの手法もありますが、家庭ではなかなか勿体ないと感じてしまいますよね。
がくから外すのは、外さずに茹でてしまいますと、がくの色が移って茶色っぽくなり、黄色く仕上がらないから。スーパーの、生姜などのある薬味エリア、ハーブなどのあるエリアをぜひチェックしてみてください。
次号では、菊花を使い切るおかずをお送りします。
(えびと豆腐の菊花あん、菊花とほうれん草のおひたし)
2024年谷尻直子(HITOTEMA)
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谷尻直子 Tanijiri Naoko
東京都渋谷区で予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰。ファッションのスタイリストを経て、料理家に転身。「現代版のおふくろ料理」をコンセプトに、ベジタリアンだった経験や、8人家族のなかで育った経験を生かし、お酒に合いつつもカラダが重くならないコース料理を提案している。