昔ながらの湯治場の雰囲気が漂う、湯の花で彩られた浴場。
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中国地方で唯一のオール5評価。全国でも19ヵ所だけの“最高級の温泉”。
個性豊かな温泉に恵まれた地、山陰。
その中でも特筆すべき名湯が、世界遺産・石見銀山(いわみ・ぎんざん)の近くにあります。
それは『温泉津温泉 薬師湯(ゆのつおんせん・やくしゆ)』。
日本温泉協会の“天然温泉審査”で、最高点のオール5を獲得!
審査項目は、源泉からの距離、1日1回栓を抜いて掃除をしているかどうか、加水や加温の有無など、多岐に渡る厳しいもので、その全てで最高評価を取得した、100%天然掛け流しの“本物”の温泉です。
施設の横の地下2~3mの岩の間から、自噴で湧き出る新鮮な源泉は、46℃という絶妙な温度。
それを贅沢に掛け流した湯船は、赤茶色の湯の花でびっしりと覆われています。
多くの薬効を誇るトップクラスの名湯。
『温泉津温泉 薬師湯』の泉質は、ナトリウム・カルシウム塩化物泉です。
ですが炭酸やメタケイ酸が豊富に含まれている事から、“温泉ソムリエ家元”が「ダブル美肌の湯」と評価。
それ以外にも多数の効能が認められています。
例えば糖尿病などの生活習慣病をはじめ、神経痛・筋肉痛・消化器の不調・皮膚病・婦人病・冷え性・虚弱体質など非常に多数。体の芯まで温もって不調が改善されたなどの声も多く、「万病に効く温泉」と称えられています。
さらに「生きている温泉」「七変化する温泉」とも呼ばれており、湧きたては無色透明ですが、空気に触れると茶褐色や黄金色、エメラルドグリーンなどに変化。
季節や時間によって異なる表情が、豊かな効能を伺わせてくれます。
こうした多彩な魅力を持ちながらも、入浴料は
大人 450円 / 子ども 200円(1歳~小学6年生)
と非常に良心的! とても気軽に楽しむことができます。
“湯浴みの作法”を知って豊かな薬効を実感しよう。
『温泉津温泉 薬師湯』の楕円形の湯船は、入る場所によって温度が異なります。
湯口(源泉が湯船に注いでいる場所)の近くは約45~46℃ですが、
湯船の入り口(手すり付近)は、ややぬるい約42℃。
そのため、体調やお好みによって最適な温度を選べます。
温泉は日々の養生として、1日3回を限度として入湯するのが正しい湯治のスタイル。
薬師湯のお客様が元気になる様子を目の当たりにした経営者は、
島根大学医学部の大学院で温泉の研究をしており、
その成果によって編み出された薬師湯独自の入浴方法が更衣室に表示されているので、
それに従って入湯しましょう。
2~3分浸かったら湯船から出るようにして、適度に休憩を挟むなど、
大切な注意事項が様々に示されています。
その方法に従って入ると、出てからの心地よさが格段に違うそうです。
湯上りは、薬効豊かでお肌にも良い中性の温泉をシャワー等で
洗い流さないようにして、そのまま上がりましょう。
成分を肌に残して、しっかり浸透させることができます。
なお、浴室には石鹸・シャンプー類は設置されていません。
浸かるだけで汚れや皮脂が取れる泉質のため、必要な人は番台で購入することができます。
湯上がり後も温泉情緒を満喫! 温泉街の眺望が楽しめる休憩室。
湯上り後も、『温泉津温泉 薬師湯』のお楽しみは多々あります。
1Fの浴室を出たら、2Fの休憩スペースに上がって温泉で温まった体を休めましょう。
まるでカフェのようなハイセンスな休憩スペースからは、温泉津の街並みを一望!
温泉地としては、日本で初めて国の“重要伝統的建築物群(町並み保存)”
に指定された景観を独り占めできます。
さらに3階には屋上ガーデンテラスがあり、石見地方(いわみ・ちほう/島根県西部)
の特産品である石州瓦(せきしゅう・がわら)に彩られた屋根たちを眺められます。
江戸時代からほぼ変わらぬ風景は、まるでタイムスリップしたかのよう。
中でもレトロさが際立つ『温泉津温泉・薬師湯』の旧館は、
浴室から立ち上る湯気を逃す“湯気出し口”や、
それを飾る可愛いとんがり屋根などで、往時の雰囲気を偲ばせてくれます。
類(たぐい)まれなる名湯を堪能した後は、レトロモダンなカフェで一服。
オール5評価の名湯と温泉津の眺望を満喫したら、隣の『震湯カフェ 内蔵丞(くらのじょう)』にもぜひ立ち寄ってみましょう。
こちらは昔の湯浴み場だった旧館で、築100年を数える大正時代の木造洋館です。
かつて男湯の更衣室だった左側のスペースは、
現在は大正~昭和期の重厚な家具や調度品を備えたレトロモダンなカフェとなっています。
軒下のアーチ細工や、内装・外装の各所に輝くステンドグラス、
ランプが吊るされた組み込み式の天井など、格式あふれる造りは必見です!
そこで供されるメニューも、温泉津の歴史と風土に育まれた特別なもの。
『薬師湯』のオーナーで、大名・毛利氏の命を受けて温泉津に奉行として移住し、後に庄屋を務めたりして温泉津に450年住み続けている内藤家に口伝されてきた「江戸時代の奉行飯(商標登録)」をはじめ、「自家製 内蔵丞カレー」「薔薇シフォンケーキ」「雑穀プティング」といった、和洋両方の美味が味わえます。
温泉津の町並みを描いた『震湯ギャラリー』も併設。
『震湯カフェ 内蔵丞』と併設されているのが『震湯・ギャラリー」。
こちらはかつて女湯だった区画をリノベーションした静かな空間で、
石見銀山の積み出し港として栄えた温泉津の海岸に漂着した流木を額にするなどした、
温泉津の風景と日常を描いた絵画が飾られています。
アーティストは、温泉津の町営バスの運転手だった森氏。
温泉津の風景をバスのサイドミラー越しに見えるスタイルにアレンジする
独自の手法によって、温かな表情で描き出しています。
さらに温泉の効果を実感できる「現代型湯治」のススメ。
なお、『温泉津温泉 薬師湯』では、温泉の効果をより実感できる“現代型湯治”を提案しています。
これはただ温泉に浸かるだけでなく、運動・ヘルシーな食事・心を満たしてくれる文化や芸術の楽しみなどを取り入れることで、総合的な癒しをもたらすプラン。
健康×観光のコラボで、「薬師湯の効果をより高めて頂きたい」という提案だそうです。
幸い、温泉津はこの“現代型湯治”に最適な地です。
ウォーキングや散歩を楽しめる海岸や山、そぞろ歩きが楽しい温泉街、
文化的な体験ができる窯元やギャラリーなどなど、総合的な癒し体験であふれています。
日帰りで立ち寄れる気軽さもメリットですが、ぜひじっくり滞在して
「オール5評価の温泉」の実力を実感してみてはいかがでしょうか?
そんな“滞在型”の湯治をしたい人のために、『温泉津庵(ゆのつ・あん)』という宿泊施設もあります。
1日1グループ限定(2~4名)でゆったりくつろげる一軒家は、
・大人(中学生以上)一泊 ¥8,500(税込)
・子供(布団なし) 一泊 ¥2,000(税込)
というリーズナブルな価格。
温泉セラピーで用いられている布団や、エアコン・洗濯機・アメニティ類などの必需品を完備。
宿泊者は、もちろん『薬師湯』に無料で入湯できます。
数日間は滞在して、温泉津名物の陶芸体験や神楽面の絵付け・魚釣り・自然散策・温泉街のそぞろ歩きなど、身も心も開放される“体験”に浸ってみてはいかがでしょうか?
もちろん世界遺産・石見銀山への観光にも便利。
車で約20分なので、観光の拠点としてもおすすめです。
- DATA
温泉津温泉 薬師湯
HP:https://www.yunotsu.com/
住所:〒699-2501 島根県大田市温泉津町温泉津7番地
電話:0855-65-4894
<営業時間>
土・日・祝: 6:00~21:00
月~金: 8:00~21:00
(年末年始の営業時間は要問い合わせ)
<料金>
大人450円 / 子ども200円(1歳~小学6年生)
<貸切湯>
大人1名800円 / 子供1名(1歳〜小学6年生)300円。
<定休日>
年中無休
- DATA
震湯カフェ 内蔵丞
電話:0855-65-4126
<営業時間>
11:00~17:00 (ラストオーダー16:30)
<定休日>
木曜日・年末年始 (※年末年始の休業期間は要問い合わせ)
取材協力・
写真提供:
温泉津温泉 薬師湯/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)