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古民家の囲炉裏で百年以上もいぶされた竹がお箸になった! 丈夫でしなやか、美しくて食べやすい「百年煤竹箸」。【煤竹工房奥出雲/島根県雲南市】

2021年2月22日

百年煤竹箸 「煤竹(すすたけ)」とは、茅ぶきの古民家で、天井や屋根の骨組などに使われていた竹のこと。
囲炉裏の煙で百年、二百年単位でいぶされて、唯一無二の美しい飴色を帯びるようになりました。

さらに強度やしなやかさも増していて、奥出雲では伝統産業・「雲州そろばん」の軸に使われてきました。
この「煤竹」を毎日愛用できる「箸」にしたのが、「百年煤竹箸」です。

その名のとおり、使うほどに美しさが増す材質と、使いやすさ、食べやすさで大人気!
NHKの「美の壺」や「マツコの知らない世界」などでも絶賛された、その奥深い魅力に迫ります。

百年煤竹箸

使うほど手に馴染む、日々の食事を豊かにしてくれる箸。

日本人なら誰もが毎日使っている「箸」。
素材やデザインは数あれど、誰もがお気に入りの一膳を持っているのではないでしょうか?

そんな暮らしに欠かせない箸を、奥出雲ならではの素材で作ったのが、この「百年煤竹箸」。
一膳一膳心を込めて磨き上げられたそれは、竹の繊維が織りなす模様と飴色の光沢があいまって、まるで芸術品のようです。

さらに「無塗装・無着色」というヘルシーな造り!
「煤竹」の風合いを堪能できる上に、口に入れても安心・安全です。

そして使い心地は、角がしっかり面取りしてあるため持ちやすくてなめらか。
やさしい手触りと機能性で、料理をより美味しく味わえるようになります。

食べやすい箸 持った瞬間に手に馴染む造りと、食事が楽しくなる食べやすさ。使った人からは
「ごはんが美味しく感じる!」
「一度使ったらほかの箸は使えない」
などという声があがるそう。

食材がつかみやすい 煤竹は乾いた状態ではツルツルするけど、食事をすると水分で竹の繊維が少しザラつく感じ。
食材がつかみやすくなり、コンニャクや極小の薬味でも吸いつくように持ち上げられる。

竹の繊維が織りなす模様を活かした立体的なカットや、見る角度によって変わる色合いや表情も魅力。

貴重な「煤竹」 「煤竹」は茅葺きの古民家がほぼ姿を消してしまった今ではとても貴重。
『煤竹工房奥出雲』の「百年煤竹箸」は、工房の主・若槻和宏さんの実家のそろばん会社が集め続けてきた奥出雲の古民家のもの。
ほとんどが200年前後 囲炉裏で燻されたもので、深い色艶と味わい深い質感が見事!

百年煤竹箸

使えば使うほど味わいが増す、3種類の箸。 ~種類と特長~

『煤竹工房奥出雲』の主・若槻さんが心がけているのは、貴重な文化遺産でもある「煤竹」を活かした‟ものづくり”です。

丈夫さ・しなやかさ・風合いの美しさはもちろん、持った瞬間に‟軽さ”と‟優しさ”を感じられるように、指が当たる部分は角をしっかり面取り。
誰もが持ちやすくて使いやすい箸に仕上げています。

種類は以下の3つで、用途によって選べます。

●食事箸

食事箸

食事をする時に使う、家庭用のお箸。

男性用は24cm、女性用は22cmが基本サイズですが、手の大きさに合わせて長めや短めもオーダーできます。
大柄な男性用は24.5cm~25cmまで、手の小さい女性やお子さんには18cmからミリ単位で作ってもらえます。
(18cm~25cmの間で選択)

なお、一般的な男性用のお箸は23.5cm。
それを5mm長い24cmにしているのは、メンテナンスの際に削っても大丈夫なように。
使う人の‟心地良さ”と、長年の愛用を見越しています。

●菜箸・菓子箸

菜箸・菓子箸

料理をする時に使う、長めのお箸。

長さは26cm~35cmまでで、箸先がやや太目なので、混ぜたり炒めたりの作業も安心。
和菓子を取り分けたり、盛り付けたりする時にも使えます。

●盛り箸

盛り箸

料亭などでお料理を盛り付けるのに使われる、プロ用のお箸。
箸先は繊細な作業のために極細になっているので、細かくて美しい盛りつけもスムーズ!
そのぶん普通の家庭では、ちょっと使いにくいかもしれません。

これらすべてが、どれも「煤竹」の素材感を大切に、料理に美しく映えるように仕上げられています。
使った後は水かぬるま湯で手洗いして、柔らかな布で水気を拭き取って、自然乾燥させればOK!
(食器洗浄機はNG)

乾いた後に乾拭きすれば、一層ツヤが増してより長持ちします。 少し手間はかかりますが、そのぶん愛着のわく逸品です。

百年煤竹箸

「無塗装・無着色」という箸の常識をくつがえした造り! 安心・安全で食べやすいお箸。

普通の箸は、素材は多々あれど、その大半が‟塗装”されています。
それはホオノキ・ブナ・桜といった国産木や、紫檀・鉄刀木(タガヤサン)といった輸入木、そしてプラスチックなどの人工の素材まで同じです。

さらに漆塗りや螺鈿(らでん)・プリント等で飾られていますが、こうした「塗装」が剥げると、そこから箸の本体まで傷んでしまって機能や清潔さが損なわれてしまいます。

「ですが無塗装・無着色の『百年煤竹箸』は、使えば使うほど味わいが出て、百年以上も囲炉裏の煙でいぶされ続けてきた竹の魅力がさらに高まります」
と若槻さん。

「こうした『煤竹』の良さを、削りと磨きだけで引き出しています。これが僕の箸作りにおける大前提とこだわりで、こうすることで耐久性が高まってとても長持ちするんです」

長年愛用できる逸品 百貨店などの催事には10年ほど使い込んだ「マイ箸」を持参する、という若槻さん。
これが実に深みのある色艶としなやかさで、「本当に10年物のお箸!?」と驚かれるそう。
きちんとお手入れすれば、買い替え不要で長年愛用できる逸品。

人生の節目に縁起が良い 誕生日・就職・退職などのお祝いや、年配の方へのプレゼントによく求められるという「百年煤竹箸」。
竹の節を活かしたデザインで、‟人生の節目”に縁起が良い。

また、普通の箸は2本並べると箸先が離れてしまうが、「百年煤竹箸」はくっつくようにカットしてあるので、「寄り添って離れない」イメージで結婚のお祝いにも人気。

アフターケアも万全 「僕は箸を売ってはいますが、『箸屋』ではなくて『煤竹のクリエイター』です。ですから買っていただいた箸が痛んでも、安易に新しい箸の買い替えを求めません。」
と若槻さん。

「傷んだり箸先が折れたりした箸は、工房に送っていただければ無料でメンテナンスします」
と、アフターケアも万全!

なぜ奥出雲の「煤竹」で箸を? 家業のそろばん作りからひらめいた物語。

若槻さんは奥出雲の伝統産業・「雲州そろばん」の工房に生まれました。
そして平成元年(1989年)に東京の大学を卒業してからUターン。
実家の「亀嵩算盤合名会社」の営業マンとして、全国のそろばん塾や文具問屋、小売店などを回る日々が始まりました。

「昭和50年代はそろばんの需要が最盛期だったものの、時代が平成に変わってからはその後は下降の一途。少子化やIT化が進むと、需要はさらに落ち込んでどん底の状態に」

加えて職人の高齢化など、不安と危機感にさいなまれる日々で、
「将来はどうなるんだろう?」
と、ずっと悩み続けていたという若槻さん。

そんな時に目に留まったのが、そろばんの軸に使われていた「竹ひご」でした。

「昔から高級なそろばんには『煤竹』が軸に使われていたんです。
それが会社の倉庫にあったので、『この代々蓄えた資源をなんとか活かせないだろうか?』と、『煤竹』を使った‟ものづくり”に取り組み始めました」

高級なそろばんの軸

営業職ではあったものの、もともと手仕事が好きで、‟ものづくり”にも取り組んでいたという若槻さん。
「『煤竹』の‟丈夫で硬く、摩耗しにくく狂いが生じない”という特性を活かした『日常の道具』が作れないだろうか?」
と、試行錯誤を始めました。

「当時はガラケーの時代で、愛用の携帯電話に手作りの『煤竹』ストラップを付けていました。それが何年か経て、艶や模様が素晴らしく味わい深くなっていく経年変化に気づき、毎日使うもので手に触れるモノは何かなと考えた時、一番身近な日用品の「箸」に着目しました」

さらにもうひとつ、奥出雲に伝わるヤマタノオロチの伝説に、箸が出てくることも決め手になったと言います。

「スサノオノミコトが高天原から地上に追放されてさまよっていたところ、ここ奥出雲を流れる斐伊川(ひいかわ)の上流から、箸が流れてきたんです。それで上流に人が住んでいることに気づき、後に妻となるクシナダヒメと出会いました。
こうした‟出会い”のストーリーと、‟人と人とのはし渡し”ができる縁起物として、奥出雲の新たな名産品にピッタリだと思ったんです」

奥出雲の新たな名産品

ただし、当時は箸作りを習いに行く余裕はまったく無くて、道具をそろえる余裕もありませんでした。そこでそろばん工場にあった道具で試行錯誤を続けて、約10年前にようやく独自の箸作りの技法を完成させたのです。

「すべてがトライ&エラーの連続で、当初はこんなにも多くの人々に愛用していただけるようになるとは思いませんでした。
そろばん会社の営業をしながら、夜な夜な工房にこもって試作を繰り返していた日々を想うと感無量です」

古民家の囲炉裏で百年、二百年も燻され続けてきた歴史的な素材を箸にして、それを手に取ってくれた人がさらに育てる、という「エイジング」。
その不可思議なご縁による連続性と、経年変化を楽しんでもらいたい、と若槻さんは語ります。

若槻さんの想い ふつう「箸は使い捨てるもの、買い替えるもの」というイメージが強くて「煤竹」という持続可能な素材の存在はあまり知られていない。

日々の暮らしに欠かせない道具を、洗ったり磨いたりして手をかけ使い込んでいく――そんな「箸を育てる」感覚や、経年変化による味わい、そして道具を大事にする文化を広めていきたい、というのが若槻さんの想い。

すべての源は「道具を大事にする心」! 箸と暮らし、箸を育てる喜びを広めたい。

「現代社会は百円ショップなど、手軽で安い‟消耗品”があふれています。
ですが自分で手を加えて愛着を感じたり、道具を大事に使って次世代に伝えていく、といった文化を『百年煤竹箸』を通じて広めていきたい、と考えています。
昨今はSDGs(持続可能な開発目標)といった事も言われるようになりましたが、もともと古民家の古材で、廃材として処分されるはずだった『煤竹』を活かし、新たな命を吹き込む、という僕の取り組み。
これもひとつのSDGsだと思い、その輪を広げていきたいと考えています」

家業のそろばんから、時代に合わせた新たな「暮らしの道具」に転換!
奥出雲の歴史と文化が絡み合い、魅力的に生まれ変わった素敵なストーリーです。

囲炉裏

「百年煤竹箸」を通して人と人とのご縁を結びたい。

「今は箸の企画・デザイン・製造・販売などをすべて1人で行なっています。そのため主な販売先である百貨店などの催事に出かけると、出雲湯村温泉のギャラリーを閉めなくてはいけないのが、最近の悩みです」
と若槻さん。

「去年(2020年)の11月はたった3日、12月に至っては全然開けられなくて、その間に訪ねてくださったお客さんに申し訳ないと思っています。
そして箸作りにいそしんでいる間も開けられないので、今後は一緒に箸を作ってくれる人、技術を伝えて育てていく事を考えなければと思っています。」

引く手あまたの人気製品になったからこその、新たな悩み。
でも、それは建設的な前進です。
「百年煤竹箸」の未来は、とても明るいことでしょう。

ギャラリー

ギャラリー

「さらにこのギャラリーは、それ自体が築130年の古民家なんです。
そこは一昨年102歳で大往生された祖母が暮らしていた母の実家でして、子供の頃夏休みはよく泊まりに行っていました。その祖母はとても探求心好奇心が旺盛でモノづくりが上手で器用な方だったのです。僕のモノ作りもそのDNAを受け継いでいるのではないか感じています。
そんな自分のルーツと思い出の詰まった古民家を活かして、ここで新たな‟ご縁”を生み出していきたい、と考えています」

たとえば「百年煤竹箸」に関する催しや、「煤竹」を使ったストラップ作りなどのワークショップ。
もともとは出雲湯村温泉の温泉客向けの旅館だったという工房は、実に風情たっぷりで居心地が良さそうです。

「今はコロナ禍で難しいですが、いずれは人がたくさん集える場所にして、『百年煤竹箸』が繋いでくれたご縁を広げていきたいですね」
と若槻さんは語ります。

百年煤竹箸の工房

「ここ出雲湯村温泉はとてものどかな山里ですが、日々素敵な出会いの連続なんです。『どうしてこんなに交流が広がるんだろう?』『どうしてこんなにすごい人達と出会えるんだろう?』というくらい、『百年煤竹箸』を通じて日々出会いと驚きが広がっています。

そうした‟ご縁”を繋いでくれる不思議な力が、『煤竹』にはあると感じています。
ですので僕からもそういうご縁を広げて、この出雲湯村温泉の工房を、新たな出会いの場にしていきたい。
いずれコロナ禍がおさまったら、ぜひおいでください」

日本だけでなく、海外からも注目されて、世界に広がりつつある若槻さんの‟ものづくり”。
エコで持続可能な新世代の「マイ箸」が、人々を魅了しています。

漆仁の湯 出雲湯村温泉は、古くから‟美肌の湯”として知られる歴史ある湯治場。

風光明媚な里山で、『煤竹工房奥出雲』のほかにもハイセンスでヘルシーな洋食レストラン&カフェ『森のvillage はぁてぃすと』、日帰り温泉『漆仁の湯』、旅館『湯乃上館』などがある。

ひなびた風情がなんとも心地よい「里山リゾート」を、ぜひ訪れてみよう!

里山リゾート

- DATA
株式会社CRAFT奥出雲
煤竹工房奥出雲

HPhttps://susudake-okuizumo.jimdofree.com
Facebookhttps://www.facebook.com/susudake.okuizumo/

住所:島根県雲南市木次町湯村1324

TEL:090-3747-7922
メール:susudake.okuizumo@gmail.com

営業時間:11:00~18:00
営業日:土・日・祝祭日
※催事への出展時は長期休業の場合あり
(工房へお越しの際はHP、SNSなどで休業日をご確認ください)

取材協力・ 写真提供: 株式会社CRAFT奥出雲 煤竹工房奥出雲/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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