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伝統工芸「長浜人形」の技法で作られた、キュートで縁起の良い「招き猫」。【島根の招き猫工房/島根県浜田市】

2023年4月14日

招き猫 「招き猫作家」の渡辺福美(わたなべ・ふくみ)さんが営む、可愛い招き猫の工房。
島根県浜田市の伝統工芸「長浜人形」の技法で、ぽってり可愛い招き猫を制作しています。

多摩美術大学の日本画科で学び、ぬいぐるみのデザイナーとして活躍したのちに、「長浜人形」の伝統工芸士に師事した福美さん。
型取りから素焼き、絵付けまで、ひとつひとつ手作業で丁寧に仕上げています。

伝統工芸の技法を活かしながらも、今のセンスに響くキュートな招き猫がいっぱい!
その愛らしさと確かな技術で「島根県ふるさと伝統工芸品」に指定されています。

可愛い招き猫

昔ながらの素材と技法で、癒しとなごみの「招き猫」を制作。

伝統芸能の「石見神楽(いわみかぐら)」が盛んで、大人気の高級魚「のどぐろ」などの美味しい魚がいっぱいとれる港町・島根県浜田市。ここにやはり伝統の「長浜人形」の技法で、可愛い「招き猫」を作っている作家さんがいます。

その名は渡辺福美さん。
浜田市に伝わる「長浜人形」を学び、昔ながらの粘土と顔料で、素朴で温かみのある「招き猫」を制作しています。

福美さんが営む『島根の招き猫工房』には、キュートで珍しい招き猫がいっぱい!

縁起の良い鯛をかついだり、石見神楽の衣装をまとったり、小判やハートを持ったり、なんとも可愛くて癒される、個性あふれる猫ちゃん達です。

いちごちゃん カラフルなフルーツをかぶった「いちごちゃん」など、ぬいぐるみのように可愛い招き猫がズラリ!

もちろん伝統的な招き猫や、浜田市の文化を取り入れた招き猫など、「長浜人形」の伝統工芸士ならではの作品も多数。

作り方は「長浜人形」そのもの 福美さんの「招き猫」の素材と作り方は、「長浜人形」そのもの。

浜田市で採れる良質な粘土を素焼きしてから、膠(にかわ:動物性のゼラチン)で溶いた天然顔料(泥絵の具や胡粉(ごふん:貝殻から作った白い顔料)で色を付けていく。

出来上がった招き猫は、やわらかなフォルムと色合いがなんとも愛らしく、温かみのある手ざわりに癒される!

作り方は「長浜人形」そのもの 江戸時代に生まれた「長浜人形」は、豪華な雛人形や武者人形を飾れなかった庶民の間で広まった。
いわゆる「土人形」の一種で、現・浜田市の長浜町が良質な粘土の産地だったことから、それを素焼きにして顔料で色付けして作られた。

粘土と顔料の素朴な質感と色あいは、時間を経てもその美しさを保ってくれる。
※紫外線で少しずつ退色するため、直射日光の当たらない場所に飾ってください。

福美さんの「招き猫」

いつもそばに置いて可愛がりたい、個性豊かな猫ちゃん達。 ~ 『島根の招き猫工房』の招き猫 ~

昔ながらの伝統と技術を大切にしつつも、今の時代にそった招き猫を生み出している福美さん。

「招き猫をお迎えしてくださった方々に、とにかく笑顔で幸せになってもらいたいです!」

と語ります。

「縁起物ですので、お手に取られた方々に明るく元気になっていただけるように、なごやかなデザインと癒される質感にこだわっています。いつも身近に置いてながめていただき、可愛い猫ちゃんでリラックスしていただければうれしいです」

その言葉どおり、福美さんが作る招き猫ちゃん達は癒しムードたっぷり! 見ているだけで笑顔になれる、不思議な魅力があります。

お金を招く招き猫 たいもちくん

めでたいお魚と言えば鯛!
華やかな赤色で「めでたい」にも通じる「鯛」は、縁起物の招き猫にピッタリです。

鯛を持った招き猫は江戸時代によく作られていたそうですが、今ではすっかり珍しくなりました。こちらはその歴史からイメージした、福美さんのオリジナルデザインです。

浜田市は魚が名物で、もちろん鯛もよくとれます。
そんな郷土色も取り入れた招き猫です。

(大きさ:約10センチ)

「たいもちくん」「たいかつぎくん」 うれしそうに肩にかついだり、得意そうに掲げたり、魚が大好きな猫ちゃん達の仕草が微笑ましい!

(右「たいもちくん」/左「たいかつぎくん」)


ご多幸招く(蛸のせ)招き猫 たこのせくん

ご多幸招く(蛸のせ)招き猫 たこのせくん

江戸時代には鯛と同じくらいの縁起物だったタコを、可愛くかぶった招き猫。
タコは「多幸」という言葉に通じて、たくさんの幸せを招いてくれます。

かつては土人形で、タコと組み合わせた縁起物が作られていました。
今は忘れ去られたその歴史を復興させた、新たな縁起物です。

(大きさ:約10センチ)

神楽招き猫セット

神楽招き猫セット

石見神楽の演目のひとつ「恵比寿」の衣装をまとった、ゴージャスな招き猫ちゃん達!
恵比寿とは、宝船に乗った福の神として知られる七福神のうちのお1人です。

そんな恵比寿様のご利益「商売繁盛」と「開運招福」を招いてくれる、とってもおめでたい招き猫。
恵比寿様のシンボル・鯛も持っているので、めでたさ倍増です。

(大きさ:約10センチ)

「神楽招き猫」 「たいもちくん」を見た福美さんのお子さんとご近所の小学生達が、「鯛を持っとるんだったら石見神楽の恵比寿さんの衣装を着せればもっと縁起がいいんじゃない?」とアドバイスをくれて生まれた、という「神楽招き猫」ちゃん。

街のイベントで日常的に石見神楽が舞われるなど、暮らしの中に伝統が息づいている浜田市ならではのエピソード。

「金椿ねこ(きんつばきねこ)」 昔ながらのデザインをアレンジした、大きめの招き猫もあり。

こちらはイギリスで赤い花が「謙遜な美徳」を、白い花が「至上の愛らしさ」を意味することからイメージした、赤椿と白椿をまとった「金椿ねこ(きんつばきねこ)」。

(約19センチ)

自然の素材 江戸時代から続く「長浜人形」の技法で、縁起物の「招き猫」を制作するのが福美さんのこだわり。

昔ながらの胡粉(貝殻の粉でできた白い絵の具)や、泥絵の具(胡粉を混ぜた粉末状の絵の具)、膠(にかわ:動物性のゼラチン)、動物の毛筆など、自然の素材が素朴で温かな質感を生み出す。

普通の招き猫はアクリル絵の具で塗っているため、質感が均一になりがち。
でも福美さんの招き猫は、素地の粘土のきめ細かさもあり、生きているような豊かな表情を持つ!

浜田市の伝統工芸「長浜人形」の技術と歴史を伝えたい。

「島根県浜田市に「長浜人形」という伝統工芸がある、という事をご存知ない方は多いですが、観光客の方に人気の『石見神楽』の神楽面(かぐらめん=神楽のお面)にもいかされています。ほかの地方の神楽面は木製が多いのですが、浜田市では「長浜人形」の人形師達が面の土型をその技法で作ることによって、和紙製のお面が生まれました。もとの「長浜人形」だけでなく、地域の伝統と文化に広く影響を与えてきたのです」

さらに浜田の庶民の暮らしや、習俗にも溶け込んでいました。

「昔は子供が生まれると、長浜人形のお雛様や天神さんを贈る習慣があったそうです。子供の無事な成長と幸せを願うものとして、浜田には長浜人形がありました。同じく長浜人形で作られた恵比寿や干支人形、歌舞伎などのキャラクターは、人々の願いや生活の楽しみとして、暮らしに寄り添っていました。そんな昔の浜田の人々の暮らしや願いや想い、風土が感じられる、長浜人形を知ってもらえたらと思います」

長浜人形

「長浜人形」の歴史と、そこから生まれた文化をたくさんの人々に知ってもらいたい、と語る福美さん。「長浜人形」の技法を活かして新感覚の「招き猫」を作るのも、その想いのあらわれだそうです。

「浜田市に「長浜人形」があったからこそ、日本遺産にもなった「石見神楽」の独特な神楽面が生まれました。「長浜人形」の伝統工芸の技術が、こうした郷土芸能を支えて文化の一端を担ってきたのです。このような歴史や技術を、ぜひ後世に受け継いでいってほしい、と思います」

福美さんが作る招き猫は、そんな「長浜人形」の入門的な存在。
その愛らしい表情や温かい質感に魅せられたら、ぜひ伝統の「長浜人形」もお手に取ってみてください。

「長浜人形」の雛人形 実は横浜市の出身で、結婚後に浜田市に移り住んで「長浜人形」と出会った、という福美さん。
すっかり浜田っ子になった今、伝統の「長浜人形」の継承と普及に奮闘中!

(福美さんが制作した「長浜人形」の雛人形)

「しまねっこ」の招き猫 島根県のご当地キャラクター「しまねっこ」の招き猫。
「長浜人形」のやわらかな質感とぽってりした愛らしさが、キュートなしまねっこにピッタリ!

(大きさ:約9センチ)

- DATA
島根の招き猫工房

HPhttps://招き猫.jp/
Facebookhttps://www.facebook.com/simanenomanekinekokoubou/

住所:島根県浜田市三隅町向野田605-5

電話:090-1011-4217
営業時間:10:00~18:00
休日:土曜・日曜・祝日

取材協力・ 写真提供: 島根の招き猫工房/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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