鴎外食とは? ~津和野の文化を味わう森鴎外ゆかりの料理
「鴎外食」とは、森鴎外が好んださまざまな料理。
鴎外と家族が記した史料から選ばれました。
津和野の自然や文化が育んだ名物も多く、その背景を知って味わえば、津和野の旅をより楽しめます。
ちなみに去る2022年は森鷗外の没後100周年でした。
これに合わせて登場したご当地グルメで、2023年には文化庁の「歴食」 (歴史的なストーリーを有する価値ある食)にも認定されました。
「鴎外食」のメニュー一覧 ~文豪の生涯を物語るさまざまな料理~
「鴎外食」のメニューは以下の9品+αです。
1品1品に鴎外のこだわりや、いつ・どんな時に食べていたのか、家族との心温まるエピソードなど、文豪の人となりを感じられるエピソードがあります。
天然鮎
森鴎外は津和野名産の鮎をひときわ好みました。
津和野を流れる高津川は、今も日本屈指の天然鮎の産地!
遠方から食べに来る人も多く、その味は天下一品です。
東京や小倉(北九州)で暮らしていた頃の鴎外は、親戚で恩師でもある米原氏から、高津川の干し鮎をよく送ってもらっていました。
“日本一の清流”に7回も選ばれた高津川の天然鮎を、文豪を偲びながら味わってみてください。
鰻重
ウナギもまた鴎外の好物でした。
東京在住時は、上野の鰻屋に足しげく通い、小倉に赴任していた頃も日記にウナギを食べたと記していました。
なお、ウナギも津和野の高津川の名産品です。
天ぷら
ウナギ鴎外は銀座にあった天ぷらの有名店の常連客でした。
長女の森茉莉氏も、両親と共にこの店に行ったことを著書に書き記しています。
その頃の茉莉氏はまだ幼かったそうですが、その記憶に鮮明に残るほど、鴎外は天ぷらを好んだそうです。また、鴎外の妻の志げも天ぷらが好物でした。
蕎麦掻(そばがき)と煮物
こちらも鴎外の大好物。
そば粉をお湯で練って餅状にしたもので、なんとお見合いの席でも所望したそうです。
虫歯になった時には、「これなら歯が痛くならない」と1カ月近くも食べ続けて周囲を呆れさせました。
また、カボチャやサツマイモなどの甘い野菜の煮物も好んだそうです。
牛鍋
こちらも鴎鴎外の著作に「牛鍋」という短編小説があります。
日本酒を飲みながら牛鍋を食べるようすをつづった一遍で、さながら文豪の食レポ。
鴎外が牛鍋を好んだかどうかは定かでないそうですが、小説に登場させたからには、やはりひとかたならぬ想いがあったのでしょう。
葉唐辛子の佃煮・牛タンの佃煮
こちらは鴎外の母・みねの好物です。
小倉に赴任した鷗外を気遣ってよく送っていました。
妹の喜美子も牛タンの塩煮を作って送っていたそうで、ほかにも鰹節や乾海苔など、遠方で暮らす鴎外の健康を気遣ってさまざまな食品を送っていました。
鴎外自身も津和野の味が恋しかったようで、母に「醤油やみそを送ってくれ」と伝えています。
食品を受け取った鴎外は、いつも律儀にお礼状を送っていました。
母のおにぎり
鴎外のお弁当の定番は母・みねが作ったおにぎり2個でした。
具は醤油と花鰹で味付けした卵焼きで、それを火で炙った浅草海苔で包むのが森家の味でした。
刺身の醤油煮
医者として衛生学を学んだ鴎外は、生ものを避けていました。
そのため刺身も醤油で煮て食べたそうです。
そのレシピは醤油に酒少々を入れて、火鉢にかけてから、刺身をサッと煮ること。
煮魚と言うより、魚のしゃぶしゃぶのような食べ方でした。
饅頭茶漬け・柿茶漬け
鴎外は大の甘党でした。
それが高じて自ら創作したメニューで、お饅頭を割ってご飯の上にのせてから、煎茶をかけて食べました。
さらに「干し柿をのせた柿茶漬けも食べていた」と息子の潤三郎氏が語っています。
鴎外食を食べられる旅館とお店
鴎外食を食べられるのは、津和野の旅館4件とレストラン1件です。
文献から忠実に再現しつつ、お店ごとの個性も感じられます。
さらに全てのお店で鴎外の著作や鴎外に関する本の無料貸し出しサービスを行なっています。
ぜひ食前や食後に読んで、文豪の生涯に思いをはせてみてください。
【全店1週間前までに要予約】
のれん宿 明月
津和野の郷土料理が評判の純和風旅館。
100年以上も続く老舗旅館で、社長自ら庖丁をふるいます。
炭火でじっくり焼いた鰻の蒲焼は絶品です。
(メニュー:鰻の蒲焼・天ぷら・牛鍋・蕎麦掻・刺身の醤油煮・コンポート・饅頭茶漬けなど)
ご予約・お問合せ:TEL 0856-72-0685
料金:1泊2食付 税込14,300円~
食事のみ:税込4,400円~ (2名以上から受付)
板前のお宿 みやけ
津和天然素材と魚の目利きにこだわる板前の民宿。
山あいの津和野で新鮮な海の幸を堪能できます。
鷗外も舌鼓を打った津和野産の天然鮎が特に人気!
「駅前ビジネスホテルつわの」に泊まって、「板前のお宿みやけ」で「鴎外食」を食べられるプランもあります。
(メニュー:鰻の蒲焼・天ぷら・牛鍋・蕎麦掻・鮎の甘露煮・刺身の醤油煮・煮物・コンポート・母のおにぎりなど)
ご予約・お問合せ:TEL 0856-72-0216
料金:1泊2食付 税込10,450円~
※「駅前ビジネスホテルつわの」の宿泊プランは、TEL:0856-72-1233、またはじゃらんnet からお申込みください
お宿 原田屋
大人の隠れ家的な落ち着いた民宿。
懐かしい味わいの創作料理はボリュームたっぷりです。
時季によっては津和野の郷土料理の「芋煮」も出してもらえます。
(メニュー:う巻・天ぷら・牛鍋・蕎麦掻・刺身の醤油煮・牛タンの塩煮・煮物・コンポート・葉唐辛子の佃煮・饅頭茶漬けなど)
ご予約・お問合せ:TEL 856-72-0973
WEB予約: じゃらんnet
料金:1泊2食付 税込9,000円~
星旅館
アットホームなおもてなしがうれしい古風な民宿。
「鴎外食」は通常の夕食メニューに加えて、鷗外の好物3品が並びます。
旬の食材たっぷりで、津和野の地酒の飲み比べも楽しめます。
(メニュー:通常の夕食+鰻の蒲焼・コンポート・お汁粉)
ご予約・お問合せ:TEL 0856-72-013
HP:http://www.sun-net.jp/~hoshi/plan.html
ピノ・ロッソ
津和野で人気のイタリアンレストラン。
洋風の「鴎外先生 明治天皇との御陪食コース」を食べられます。
その名のとおり明治天皇とのご会食メニューをイタリアンにアレンジしたもので、鴎外が小倉に赴任していた時に招かれた「御陪食」がモデルです。
鴎外は全てのメニューを日記に記していて、とても名誉に感じていたようです。
メニューは肉料理や煮込み料理が中心で、もちろんデザートも付きます。
ご予約・お問合せ:TEL 0856-72-2778
料金:1人前 税込5,500円~
定休日:毎週木曜 (臨時休業あり)
※ディナーのみ受付(2名以上)/レストランのため宿泊は不可
津和野に残る森鴎外ゆかりの名所4選
津和野には、鴎外ゆかりの名所がいくつもあります。
特に以下の4つはぜひ行ってみたいスポット!
文豪の足跡をたどってその人生を追体験できます。
①森鷗外記念館・森鷗外旧宅
鴎外が幼少時に住んでいた邸宅と、その隣に建つ記念館。
記念館では鴎外の遺品や直筆原稿などを展示しています。
②覚皇山 永明寺(かくおうざん ようめいじ)
江戸時代に建てられたお寺で、鴎外のお墓があります。
わびさびたっぷりの風景が素晴らしく、津和野藩の歴代藩主の菩提寺でもあります。
③津和野町日本遺産センター
津和野の江戸時代の風景を描いた「津和野百景図」を展示しています。
その中に鴎外の著書「ヰタ・セクスアリス」で少年時代の鴎外が見たお堀(百景図65図)や、津和野踊り(百景図第99図)などが描かれています。
津和野の風物詩「鷺舞神事」の衣装の展示もあって、間近で見られます。
④津和野藩校「養老館」
鴎外の母校です。
ほかにも幾人もの俊才を輩出した名門校で、明治5年まで存続していました。
第8代津和野藩主によって江戸時代に建てられ、ここで学んだ人々が津和野藩をおおいに栄えさせました。
- DATA
鴎外食(おうがいしょく)
HP:https://tsuwano-kanko.net/info/ougaiplan_info/
住所:島根県鹿足郡津和野町
お問い合わせ:0856-72-1771
(津和野町観光協会/受付時間:9:00~17:00 (年中無休))
料金:ディナー 5,500円~ / 1泊2食 9,000円~ (全て要予約)
※旅館・レストランごとにメニューと料金は異なります
※季節や料金によってメニューは変わります(食材の旬などのため)
取材協力・
写真提供:
一般社団法人 津和野町観光協会・公益社団法人 島根県観光連盟・津和野町日本遺産センター/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)