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島根県雲南市育ちの蔵元杜氏が地元の水とお米で造る、純・雲南市産の日本酒!
西日本にありながら、冬は雪に埋もれることの多い奥出雲地方。
その玄関口の雲南市は、西日本でも有数のお米どころです。
そんな雲南市で、すこやかな酒米とすこやかな湧き水から、すこやかなお酒をかもしているのが、この『木次酒造』。
そのお酒は、ひと口飲めば誰もが実感できる力強くてしっかりとした味わいです。
華やかな香りが出る酵母はあまり使っていないのに、
「とてもフルーティーでみずみずしい味わい!」
と評判。
※一部のお酒には、数年に1回ほど大吟醸用の酵母も使用
「出来ることをしっかりこなしながら丁寧に作っているので、その結果かと思います」
と、蔵元杜氏の川本康裕(やすひろ)さんは語ります。
「丁寧に醸造されていることがよく分かる味だ」
ともよく言われるそうで、他の蔵元にはない独特の味わいです。
手間ひま惜しまず、とにかく丁寧に。その時間と努力がお酒の味に反映! ~ 人気のお酒 ~
こうして醸された『木次酒造』のお酒は、
「とてもしっかりした味わい!」
「力強い風味」
と評判です。
アルコール度数は発酵終了時に大体19度ほどになるそうで、手間ひまかけた工程が生きています。
「蔵元杜氏としてはまだ経験が浅く、今年で約14年ですので、それをカバーする意味もあって他の蔵元さんよりも丁寧さを心がけています」
と川本さん。
このように、手間ひまかけた工程が味に如実にあらわれています。
そんな『木次酒造』で、特に人気のあるお酒を聞いてみました。
①『雲』純米吟醸 無濾過生原酒(白ラベル)
赤ラベル、白ラベルの2種類がある『雲』のうち、しっかりとした味わいがありながら、スッキリ感を感じられるのが、この白ラベル。
味は辛口ですが、お米由来の甘みと旨味、そして酸味も感じられる爽やかな味わいで、食前・食中酒に最適です。
その名のとおり、生の原酒を濾過しないで瓶詰めしたナチュラルなお酒です。
(原料米:佐香錦 / 精米歩合:55%)
②『雲』純米 無濾過生原酒(赤ラベル)
『雲』シリーズの別バーションで、しっかりとした旨みがあります。
白ラベルは爽やかな酸味が際立っていますが、この赤ラベルはよりしっかりとした旨みが後を引きます。
(原料米:五百万石 / 精米歩合:65%)
③「うん、何?」純米吟醸熟成原酒
お米由来の甘さとふくよかな味わいを実感できる、純米吟醸の熟成原酒。
濃厚な熟成香と複雑な旨みを楽しめます。
爽やかな酸味があるため後口はスッキリ!
そのためどんな料理とも良く合います。
もちろん旨みもしっかりあり、オンザロックにしても味が崩れません。
雲南市が舞台の映画「うん、何?」(錦織良成 監督作品)を記念して造られたお酒です。
(原料米:佐香錦 / 精米歩合:55%)
④純米酒 美波 太平洋
加水火入れ(原酒に仕込水を加えて、アルコール度数を調整してから火入れする製造方法)で造られたお酒。
そのためスッキリした口当たりの中に、しっかりとした旨みが漂います。
おすすめの飲み方は、70度くらいの熱燗にしてから、冷ましながら飲む方法。
アルコール度数は15~16%で、キレのある豊かな味わいです。
「いつまでも飲んでいられる!」
というファンが多く、今ある在庫は熟成によって凝縮した旨み成分の澱(おり)があるので、特におすすめだそうです。
(原料米:五百万石 / 精米歩合:65%)
⑤八塩折酒 古代仕込
ヤマタノオロチ神話が残る雲南市にちなみ、古代人が飲んでいたお酒をイメージして造られた一本。
『木次酒造』が古代の醸造法を想像・解釈して現代に再現しました。
古代の主食だった雑穀(ヒエ・アワ・キビ・麦)とお米で醸しています。
精米歩合は95%で、わずか5%しか削っていません。
これは穀物の精製技術が発達していなかった古代のお酒を再現したためで、水も現代醸造法の約半分しか加えていません。
そのためとても濃厚で、そのヘルシー感から、特に女性に人気があるそうです。
熟成が進むと味噌のような風味が出て、これまた自然派に好評。
プロの料理人からも「ソースとして使いたいくらい濃厚」と言われるほどで、雑穀の豊かな風味としっかりした味わい、そしてしっかりとした穀物の甘さが人気です。
このように、かなり個性的なお酒なので蔵元杜氏の川本さんいわく
「同様のお酒はおそらく日本全国でうちしか造っていないのでは?」
とのこと。
その分かなり好みが分かれて、病みつきになるか、あまり手が伸びないかのどちらか。
でも、一度は飲んでみたいレアなお酒です。
異色の経歴の蔵元杜氏による、日々進化するお酒造り。
『木次酒造』の創業は大正12年(1923年)。
以来、平成17酒造年度までは、出雲杜氏さんに来てもらってお酒を造っていました。
ですが翌 平成18年酒造年度から、お酒造りを引き継いだ川本康裕さんが、自ら杜氏としてお酒を造るように。
※酒造年度:お酒造りの区切りとなる、7月1日~翌年6月30日までの期間
さらに平成22酒造年度からは、社長として『木次酒造』の全てを継ぎましたが、その当時でもまだ38歳だった川本さんは、その後お酒を美味しくする技術を積極的に取り入れながら、日々試行錯誤。
そのため『木次酒造』のお酒は年々進化しています。
そんな前向きな変化が楽しめる酒蔵ですが、変わらないのは
「飲んだ人が思わず笑顔になるお酒を造りたい!」
というポリシー。
毎年飲み続けるごとに、新たな味と変わらない安心に出会えます。
そんな川本さんが醸造学を学んだのは、「日本酒造りの王道」と言われている東京農業大学ではなく、ワイン醸造学で有名な山梨大学。
その理由は、日本酒の醸造を学ぶために大学に進学するにあたって、
「私立ではなく、国立大学にして欲しい」
と、ご両親に頼まれたから。
それが意外な功を奏して、現在のお酒造りにつながっています。
「当時、国立大学で日本酒の醸造学をメインに学べるところはなかったんです。そのため『お酒の種類は違うけど、同じ醸造酒で一番現場に近い勉強ができるみたいだよ』と、高校の校長先生が勧めてくださいました。
それが今となってはとても良い結果を生んで、異業種のノウハウを取り入れられただけでなく、今やワイン業界で名をなしている大学の同級生や先輩後輩から、とても良い刺激を受け続けています」
と川本さん。
「いずれは『木次酒造』を継ぐことになるだろう」
「お酒造りも自ら行わないといけないかもしれない」
と考えてはいたものの、急なトラブルのため、想定以上に早く蔵を継承することになった川本さん。
そこでまずは経験豊富な杜氏さんに学んで、次の酒造年度からはさっそく自らお酒造りを始めました。
普通は何年もかけて現場の師匠から学ぶそうですが、最初に指導してくれた杜氏さんから
「1人でできると思うからやってみなさい」
と言われて、試行錯誤しながら技術を磨いたそうです。
「いきなり現場に放り込まれるというスパルタでしたが(笑)自分自身で試行錯誤を重ねたことに加えて、先輩杜氏の方々、まわりの蔵元様、島根県のお酒の指導をしてくださる先生方に助けていただいて、ここまで来ることができました。このような経緯ですので、島根の酒蔵の中でも独特の味が出ていると思います」
とことん自らの手で行なう蔵元杜氏は、厳選した地元産の原料米を確実に使うために、精米まで手掛けています。
「良質な原料と雲南市産にこだわっているので、自らやらざるを得ない事は増えました。ですが、だからこそ胸を張っておすすめできるお酒造りができています。
こうした状況になるべく、いろんな事が導かれてきたように感じます」
不測の事態も強みに変えて、独自のお酒造りに邁進。
「ヤマタノオロチ神話のふるさと」で輝く、個性と信頼の酒蔵です。
- DATA
木次酒造株式会社
HP:http://www.kisukisyuzou.com/
Facebook:https://www.facebook.com/kisukisyuzou/
住所:島根県雲南市木次町木次477-1
電話:0854-42-0072
メール:taiheiyo@kisukisyuzou.com
営業時間:9:00~17:30
休日:不定休
取材協力・
写真提供:
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ライター:風間梢(プロフィールはこちら)