神崎神社の魅力 ~日本海を望む工芸品のような神社~
鳥取県の秀峰・大山(だいせん)の北に位置する琴浦町。
ここに日本一長い龍の彫刻がある『神崎神社』が建っています。
日本で最も長い龍の彫刻は、なんと16m!
「願いを叶えてくれる」と伝わる如意宝珠(にょいほうじゅ)を持ち、威風堂々とした姿で身をくねらせています。
そのため、「神崎神社の龍の真下で祈ると願いが叶う」という言い伝えが。
ほかにも竜宮城や唐獅子牡丹など、あちこちに壮麗な彫刻が彫られています。
神崎神社のご祭神と歴史
神崎神社のご祭神は、ヤマタノオロチ退治で有名な素戔嗚尊(スサノオノミコト)。
地元の人々は親しみをこめて「荒神(こうじん)さん」と呼んでいます。
神社の起源は室町時代とも言われていますが、最も古い記録は江戸時代の元禄15年(1702年)。
本殿・拝殿ともに見事な彫刻がほどこされていて、本殿の建物は鳥取県の指定文化財の第一号に、本殿と拝殿の扉、および向拝(こうはい)の彫刻は、同じく二号に指定されています。
※本殿とは:神様がいらっしゃる社殿
※拝殿(はいでん)とは:参拝者がお参りするための社殿/本殿の手前に建てられていることが多い
※向拝(こうはい)とは:お参りする位置に張り出した庇(ひさし)/神社の屋根中央の、手前に張り出した部分
神崎神社の彫刻と建築
神崎神社の拝殿 ~日本一長い龍の彫刻はここ!~
『神崎神社』の龍の彫刻は、参拝者がお参りする「拝殿」にあります。
大注連縄が飾られた拝殿の向拝(こうはい)に立ち、その天井を見上げれば、大迫力の龍が真上に!
7枚の巨大な欅(けやき)の板に、長さ16mにわたって彫られています。
この龍が握りしめているのは、願いを叶えてくれると伝わる「如意宝珠(にょいほうじゅ)」。(写真左下)
「一切の願いが意の如く叶う」という意味のラッキーアイテムで、この下で祈れば願いが叶うと言われています。
龍の下で願掛けをしたら、次は数歩下がって大注連縄の上を見てみましょう。
竜宮城・乙姫・浦島太郎・波など、海にまつわる彫刻が絵巻物のように彫られています。
竜宮城の建物には「竜宮」と彫られた旗まであり、とても細かい細工です。
それらの両端は牡丹を咥えた唐獅子(唐獅子牡丹)で飾られていて、この唐獅子牡丹もまるで実物のような立体感!
さらに拝殿の右には、かつて大和朝廷と争った熊襲(くまそ)を討伐して、海の向こうの新羅・百済・高句麗に朝貢を誓わせた神功皇后(じんぐうこうごう)が。
そのお腹は第14代天皇・仲哀天皇の忘れ形見の応神天皇を宿してふっくらとしています。
そして拝殿の左には、神功皇后に仕えた武内宿禰(たけのうちすくね)と応神天皇が彫られています。
神崎神社の本殿 ~神のお住まいを飾る多彩な彫刻~
拝殿の奥にある本殿も見事!
どっしりとした重厚な建築のそこかしこに、やはり臨場感あふれる彫刻が彫られています。
本殿の向拝の唐破風(からはふ:軒先の中央などが盛り上がった部分)には、菊・龍・葡萄・リスなどが彫られています。
そして屋根下には鳳凰・龍・獏・蝶などが。
木鼻(きばな:柱から突き出た木の端)には、楓・菊・大根などの植物や、鼠・牛・馬などの動物が見られます。
さらに大黒様や恵比寿様など、計43種類もの縁起の良いモチーフが本殿を飾っています。
神崎神社の歴史と信仰
神崎神社は江戸時代、神仏習合のならわしによって三宝大荒神(さんぽうだいこうじん)と呼ばれていました。
それが転じて、今も「荒神さん」と呼ばれて親しまれています。
※三宝大荒神とは:仏教の三宝(仏・法・僧)を守護して、不浄をはらって悪人を罰する神
※神仏習合とは:神を祀る神社と仏を祀る寺が尊重しあい、互いの教義や神仏の一部が融合したもの/明治元年の「神仏分離令」によって禁じられて、それ以降は神社と寺、神と仏の分離が進んだ
また、日本海を見渡す高台に建つことから、海の神様として信仰されていました。
近くに菊港(赤碕港)があり、それが北前船の寄港地として栄えたことから、漁師や海運業者(廻船問屋など)から海上安全・水産開運のご利益を祈願されました。
※赤碕港は本港・菊港・西港の3つの港からなり、菊港は歴史的に最も早くできた港
さらに南にそびえる大山(だいせん)の麓が牛馬を育てるのに良く、それらを取引する日本最大級の牛馬市が立ったこと、農地にも適していて、農耕のための牛馬が多くいたことなどから、牛馬の守護神としても敬われるようになりました。
この「牛馬信仰」は当時の伯耆(ほうき:鳥取県の中部~西部)だけでなく、出雲(いずも:島根県の東部)や備後(びんご:広島県の東部)、備中(びっちゅう:岡山県の西部)との境まで広がり、『神崎神社』はおおいににぎわったそうです。
神崎神社のお祭 ~波止のまつり~
年に一度、7月28日は『神崎神社』の例大祭です。
これにあわせた7月27~28日の「波止の祭(はとのまつり)」は70年以上も続いています。
7月27日は例大祭の前夜祭で、『神崎神社』から神輿が出て、海のそばの御旅所(神様の宿)までねり歩きます。
そして日本海に夕日が沈むころに、神輿が御旅所に到着。
その後開かれる花火大会は、花火が間近に打ち上げられて大迫力!
たくさんの屋台も立ち並び、地元の人々や観光客でにぎわう琴浦町の一大イベントです。
翌7月28日には『神崎神社』で例大祭の祭典が、神社にほど近い赤碕港で「船御幸(ふなみゆき)」が行なわれます。
さらに子供神輿や大人神輿が町内をねり歩き、お祭りは最高潮に達します。
「船御幸」は神輿や神官などをのせた船と、それに付き従う約20隻の漁船が琴浦町の海を一周する壮大な神事! 海の安全と豊漁を祈願しつつ、大漁旗などを勇壮になびかせます。
そのあと御旅所をたった神輿が再び町内を練り歩き、神様が『神崎神社』にお戻りになられます。
【神崎神社 例大祭(波止のまつり)】
開催日:毎年7月27~28日
会 場:神崎神社~赤碕港
お問い合わせ:0858-55-7811(琴浦町観光協会)
- DATA
神崎神社
HP:http://kanzakijinjya.com/
住所:鳥取県東伯郡琴浦町赤碕210
電話:0858-55-0598
※電話番号は宮司宅のため、NAVIの電話番号登録には使用できません(登録される場合は「神崎神社」でお願いします)
参拝時間:9:00~16:30
駐車場:あり
※マイクロバスまで駐車可
- DATA
2024 辰年 開運琴浦 昇龍めぐり
HP:https://www.kotoura-kankou.com/dragons/
住所:鳥取県東伯郡琴浦町別所1030-1
お問い合わせ:0858-55-7811(琴浦町観光協会)
受付時間:9:00~17:15
取材協力・
写真提供:
神崎神社・琴浦町観光協会・鳥取県/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)