『絲原記念館』の楽しみ方と見学時間
『絲原記念館』は松江藩のもとで「たたら製鉄」を取りしきっていた、絲原家の歴史を紹介する資料館。
「鉄師御三家」と呼ばれて隆盛を誇り、「たたら製鉄」の燃料を伐り出す広大な山林を所有して、大勢のたたら師たちを指揮していました。
そんな絲原家の広大な敷地に築かれた記念館には、3つのエリアと2つのお店があります。
①記念館エリア (見学時間:約30分)
②居宅・庭園エリア (見学時間:約20分)
③洗心乃路エリア (見学時間:約25分) ※冬季は閉鎖
・カフェ「茶房十五代」
・お土産処「砂鉄」
すべて見て回ると約1時間半~2時間弱で、風情たっぷりの和カフェと鉄製品が買えるお土産処もぜひ立ち寄りたいところ!
特にカフェ「茶房十五代」は奥出雲町の内外から常連さんが通うほど居心地が良いので、時間に余裕をもって行くのをおすすめします。
『絲原記念館』の見どころ~「たたら製鉄」と「鉄師頭取」の歴史~
『絲原記念館』は奥出雲の歴史と文化を伝える生きた資料です。
往時の雰囲気が漂うゆったりとした空間で、タイムスリップしたかのような感覚を楽しめます。
各エリアの見どころをご紹介しましょう。
①記念館エリア
白壁土蔵造りの「第1展示棟」と、上棟の布団蔵を改装した「第2展示棟」からなる資料館。(写真左手)
第1展示棟には「たたらコーナー」「有形民俗資料コーナー」「簸上鉄道コーナー」があり、絲原家の歴史と「たたら製鉄」の製法がわかります。
「たたらコーナー」では動く模型や原料の真砂砂鉄(まさごさてつ)、それを製錬した鉧(けら:「たたら製鉄」で得られる粗鋼のかたまり)、鉧をさらに加工してできる最高純度の鋼「玉鋼(たまはがね)」など、さまざまな資料や文献で「たたら製鉄」の仕組みと歴史を解説しています。
「有形民俗資料コーナー」では、絲原家に伝わる家具や調度・衣類・儀礼用品・嫁入り道具などを展示していて、「鉄師御三家」と讃えられた絲原家の暮らしがわかります。
第2展示棟では、絲原家に伝わる美術工芸品を展示。
年3回春・夏・秋冬の「企画展」で展示品が入れ替わります。
茶人の千利休や、日本の写実画の祖と言われる円山応挙、松江を日本三大菓子処にした風流人のお殿様・松平不昧公(松江藩第7代藩主)など、絲原家ゆかりの文人墨客たちのそうそうたる絵画や書を鑑賞できます。
さらに松平不昧公の茶道具や、松江藩お抱えの漆匠の漆器、中国の明・清・李朝時代の陶磁器など、工芸品のコレクションも豊富です。
②居宅・庭園エリア
絲原家の居宅は建坪350坪・部屋数40室を誇る大邸宅。
国の有形登録文化財に指定されています。
現在の建物は江戸時代の後期の建築で、往時の「鉄師御三家」の繁栄を物語ってくれます。
松江藩主の本陣(領地を視察する際に泊まった宿)にもなった「客殿棟」や、大正13年(1924年)に増築された「母屋棟」などがあり、今も当主とその家族が住んでいます。
玄関はかつて松江藩主をお迎えした「御成口」や、常時の出入口の「大戸口」など計5つもあります。
庭園は約360坪もある池泉回遊式(池のまわりを散策する造り)の出雲流庭園で、背後の中国山地を借景にした壮大な眺めを楽しめます。
これほど広いのは、元が「たたら製鉄」の原料の真砂砂鉄(まさごさてつ)の採取地だったから。
それを江戸時代の末期から約50年かけて庭園に造り変え、わびさびが漂う書院や飛び石組手法(細長い短冊石と丸い石を組み合わせる造園技術)などが特徴的な、奥出雲の風土を映した庭園に仕上げました。
完成は明治時代の中頃で、国の名勝に指定されています。
かの与謝野晶子など、多くの文人墨客が愛したながめは必見!
③洗心乃路(せんしんのみち)エリア ※冬季は閉鎖
『絲原記念館』の一番奥にあるエリアで、約2000坪の木立の中に山野草や茶花、樹木などが約350種類植えられています。
その中を100m~300mの遊歩道が通っていて、春夏秋冬の景色と植物の変化を楽しみながら散策できます。
※遊歩道の長さは巡るルートによって変わります
池や水路、泉や滝、全体を一望できる見晴らし台などがあって、松などの巨木もそびえています。
春は雪解けと芽吹き、初夏は新緑、秋は紅葉の彩りが見事で、絲原家の造園技術と奥出雲の里山の美しさを実感できます。
※冬は豪雪地帯のため閉園
カフェ「茶房十五代」
記念館エリアの手前にある和カフェ。
大正時代の建築をリノベーションした風情たっぷりのお店で、見学前後の休憩にピッタリです。
調度も素晴らしく、特に絲原家の山林から伐り出した欅(けやき)で作られたテーブルは見事!
自慢のコーヒーは日本有数のカフェ激戦区・松江の人気店「LITTLE COURT COFFEE(リトル コート コーヒー)」の自家焙煎で、注文後に一杯一杯ハンドドリップで淹れてもらえます。
日替わりケーキなどのスイーツもあり、大人好みの上品な味わい。
「この雰囲気と味がたまらない!」
と、ここだけを目指して来る常連さんも多いそうです。
大正ロマンが漂う店内から、庭園や土蔵などをながめながら一服できます。
営業時間:10:00~16:00
定休日:水曜+不定休
※公式HPの営業カレンダー でご確認ください
お土産処「砂鉄(こがね)
『絲原記念館』の入口にある売店。
奥出雲名物の蕎麦など、いろんなお土産や工芸品が並びます。
人気のお土産は品揃えが豊富な包丁で、奥出雲の良質な真砂砂鉄から1本1本伝統製法で作られた手打ち包丁が特におすすめ!
「量産品とは質と切れ味が違う」と好評だそうです。
こちらは島根県ふるさと伝統工芸品に認定された「雲州忠善刃物」の職人・川島久忠さんの作。
オンラインショップ からも購入できます。
(菜切包丁・出刃包丁・刺身包丁など)
店内には観光案内所が併設されていて、『絲原記念館』周辺の見どころや奥出雲のパンフレットなどをもらえます。
絲原家の歴史 ~奥出雲の発展への貢献~
絲原家はもともと武士の一族でした。
初代の絲原善左衛門が江戸時代の初期に備後国(現在の広島県)から奥出雲の大馬木村に移り住んだのが、「鉄師御三家」としての絲原家の始まりです。
善左衛門は奥出雲で農業を営むようになり、ほどなく奥出雲の地場産業だった「たたら製鉄」にも参入。
そして江戸時代の中期には、9代目の絲原忠三郎が現在の絲原家の敷地に高殿(たかどの:「たたら製鉄」の主要な設備の「鉄穴鈩」を設けた建物)と居宅を移しました。
さらに松江藩から「たたら製鉄」を指揮する「鉄師」に任じられて、その鉄師たちを統率する「鉄師頭取」まで務めました。
しかし大正時代の後期に渡来した洋式製鉄の生産力に押されて、約280年も営んできた「たたら製鉄」を廃業。
「たたら製鉄」の燃料の木を伐り出すために所有していた広大な山林を活かして、山林業に転身しました。
その後も国や県の議員を何人も輩出して、奥出雲の発展や鉄道(木次線)の開通などに尽力。
現在の当主は15代目の徳康氏で、約400年続く絲原家と、『絲原記念館』に代表される歴史遺産を守っています。
- DATA
絲原家 絲原記念館
HP:http://itoharas.com/
Instagram:https://www.instagram.com/itohara.kinenkan/
Facebook:https://www.facebook.com/itoharas/?locale=ja_JP
住所:島根県仁多郡奥出雲町大谷856
電話:0854-52-0151
営業時間:9:00~17:00(入館16:00まで)
休館日:年末年始(12/30〜1/5)、展示替日(3・6・9月に各5日程度)
※2024年1月17日~3月31日(予定)まで臨時休館(改装工事のため)
<入館料金>
通常料金:一般 1000円 / 高校・大学生 700円 / 小・中学生 300円
冬季料金:一般 800円 / 高校・大学生 550円 / 小・中学生 250円
※団体割引あり(20名以上)
取材協力・
写真提供:
絲原家 絲原記念館・奥出雲町観光協会・公益社団法人 島根県観光連盟/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)