エポラコラムサイト

卜蔵庭園・たたらの灯|奥出雲の日本庭園と棚田

2024年12月14日

ト蔵(ぼくら)庭園 『ト蔵(ぼくら)庭園』は奥出雲の山あい、美しい里山にたたずむ日本庭園。

江戸時代の名工による作庭で、鯉が泳ぐ池を中心に、背後の山々を借景にした雄大な眺めが見事です。

※借景(しゃっけい)とは:庭園の外の風景を庭園の一部として取り入れたもの

・日本遺産「出雲國たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語~」の構成文化財
・国の重要文化的景観「奥出雲たたら製鉄及び棚田の文化的景観」
・奥出雲町の指定名勝


に選ばれていて、付近には“たたら製鉄”を営んでいたト蔵(ぼくら)家の史跡が点在しています。

毎年9月下旬~10月下旬には、その中の「追谷棚田」でライトアップイベント「たたらの灯」が開催されます。

住所:島根県仁多郡奥出雲町竹崎800(ト蔵庭園)
住所:島根県仁多郡奥出雲町竹崎803-1(追谷棚田/たたらの灯)
定休日:なし
(年中無休・見学自由)
入園料:無料
駐車場:あり
(無料)

「ト蔵庭園」と鉄師「ト蔵家」 ~“たたら製鉄”の栄華を物語る史跡群~

追谷(おいだに)地区

「ト蔵庭園」があるのは、島根県奥出雲町の追谷(おいだに)地区。

江戸時代に松江藩の富を支えた“鉄師五家”のひとつ、「ト蔵家」が営んでいた“たたら製鉄”で栄えた地です。

楠木正成の子孫であった「ト蔵家」は、室町時代にこの地に移り住みました。

そして約500年に渡って“たたら製鉄”を営み、追谷棚田(写真上)原たたら(叢雲たたら)跡・ト蔵の水車などの史跡をのこしました。

静かで心癒される景色

その中でも「ト蔵庭園」は、ト蔵家の繁栄をよく伝えています。

作者は徳川家の茶道指南役を務めた大名茶人・小堀遠州の弟子。ト蔵家によってこの地に招かれて、1691年(元禄4年)に「ト蔵庭園」を築きました。

追谷地区ではそんな美しい庭園と“たたら製鉄”の史跡群から、奥出雲の歴史をかいま見られます。

まさに日本の原風景といった「追谷棚田」など、静かで心癒される景色です。

「ト蔵庭園」の見どころ

奥出雲の風景を借景

「ト蔵庭園」は奥出雲の風景を借景※1にした、約260坪の池泉観賞式庭園※2です。
江戸時代の初期にト蔵家の旧廷の一部として造られました。

※1 借景(しゃっけい)とは:庭園の外部の風景を庭園の一部として取り入れたもの
※2 池泉(ちせん)観賞式庭園とは:屋敷や書院などの建物に座って眺めるように造られた、池や泉のある庭園

ト蔵庭園

借景は標高1,142.5メートルの船通山と、標高1,080メートルの家内住山で、解放感たっぷり!
船通山はスサノオノミコトが高天原から降臨したと伝わる山です。

庭園の中には鯉が泳ぐ池があり、三段の滝も設けられています。
また、池の中にはいくつもの出島があります。

池を渡る石橋や、大きな石灯籠、手水鉢なども風流で、それでいて武士の時代に造られた質実剛健さも感じられます。

ト蔵家の史跡群 ~追谷棚田・金屋子神社・叢雲たたら跡・ト蔵の水車~

「ト蔵庭園」の近くには“たたら製鉄”の史跡が点在しています。
それらもぜひ巡ってみましょう!

見事な棚田をはじめ、まるで昔話のような風景が広がっています。

①追谷棚田(綿打公園)

追谷棚田(綿打公園)

「ト蔵庭園」から約700メートル登った高台にある棚田。
船通山のふもとに築かれていて、視界いっぱいに美しい田んぼが広がります。

これは“たたら製鉄”の工程のひとつ「鉄穴(かんな)流し」の跡で、元は山の斜面でした。

鉄穴(かんな)流しとは:砂鉄を含む山の土を切り崩し、土砂を水路に流して、比重の軽い土砂と比重の重い砂鉄を分離する方法

追谷棚田(綿打公園)

その跡地を有効利用したもので、標高が高くて昼夜の寒暖差が激しく、ミネラルを豊富に含む土地からは、とても美味しいお米が収穫できます。

こうした追谷地区の棚田で育ったお米は、日本有数のブランド米・仁多米(にたまい)の中でも特に美味しい「源流仁多米こしひかり」となります。

また、毎年9月下旬~10月下旬には「たたらの灯」イベントで美しくライトアップされます。

②金屋子神社と桂の木

金屋子神社と桂の木

“たたら製鉄”の守り神・金屋子(かなやご)神をお祀りした神社と、金屋子神が降臨する伝わる桂の木。

奥出雲の“たたら場”には必ず桂の木が植えられて、その側に金屋子神社が建てられます。

金屋子神社と桂の木

桂の木は毎年3月下旬ごろに芽吹いて、その新芽が真っ赤な色をしているため、まるで炎が燃え盛っているように見えます。

③ト蔵の水車

ト蔵の水車

“たたら場”の跡地に復元された水車。

水車は“たたら製鉄”の鈩(ろ)に空気を送り込む「ふいご」の動力源として使われたほか、水車を動かした水が砂鉄を洗い清めるためにも使われていました。

のどかな田園風景と共に郷愁を誘います。

④原たたら(叢雲たたら)跡

原たたら(叢雲たたら)跡

ト蔵家が最後まで動かしていた“たたら製鉄”の鈩(ろ)の跡。

江戸時代の明和5年(1768年)~大正時代の1925年(大正14年)まで、157年間も操業していました。

たたらの灯 ~日本遺産の棚田を幻想的にライトアップ!~

美しい風景

こうした美しい風景が見られる追谷地区では、毎年9月下旬~10月下旬に「追谷棚田(綿打公園)」がライトアップされます。

題して「たたらの灯」

棚田一帯が幻想的に彩られ、ノスタルジックな里山の灯と共に夢のような一夜を過ごせます。打ち上げ花火や屋台テント村などのイベントも開催されます。

※イベントの日時や内容はHPをご参照ください

たたらの灯

【たたらの灯】
HP:https://shimane-tanada.net/oidani/
イベント期間:9月下旬~10月下旬
ライトアップ時間:およそ18:00~21:00
会場:島根県仁多郡奥出雲町竹崎803-1(追谷棚田/綿打公園)
入園料:無料
お問い合わせ:090-8063-7471(たたらの灯実行委員会/加納)

SDGsのさきがけだった奥出雲の“たたら製鉄”

たたら製鉄

奥出雲の“たたら製鉄”は、今で言うSDGsのさきがけでした。

地域循環型の産業として、奥出雲のエリア内で農業・動物(牛)・自然などと支えあいながら営まれていたのです。

たとえば砂鉄を含む土を削った山は、お米を育てる棚田へと再生。そこから“お米の西の横綱”と呼ばれる仁多米が育ち、日本屈指のブランド米として知られるようになりました。

そして“たたら製鉄”で使われていた水路やため池は、棚田への水の供給や、生活用水として活かされています。

たたら製鉄

たたら製鉄

鉄や荷物を運んでいた牛のフンは、棚田の肥料にして、棚田を耕すのにも牛が活躍していました。
牛のフンを良質な有機肥料に再生するシステムは、今も奥出雲町で続いています。

さらに牛の交配や品種改良の技術は、奥出雲和牛というブランド和牛を生み出しました。

これらの循環システムは「たたら製鉄に由来する奥出雲の資源循環型農業」として、日本農業遺産に認定されています。

人と自然とが協調しあいながら続いてきた奥出雲の歴史は、今も変わらず営まれています。

古民家そば たたらの家 「ト蔵の水車」のそばにある「古民家そば たたらの家」
奥出雲は蕎麦の名産地でもあり、石臼挽きの美味しい十割そばを食べられます。

里山の美しい風景をながめながら、そこで育った蕎麦や仁多米を味わうひとときは格別!

仁多米ライスバーガー 「古民家そば たたらの家」の人気メニューの仁多米ライスバーガー。(奥出雲和牛入り/お取り寄せ可)

ほかにも舞茸・川魚・山菜の天ぷらなどの里山グルメが評判で、湧き水でドリップしたコーヒーはブラジル産の生豆を自家焙煎しているというこだわりぶり!

「ト蔵庭園」や「追谷棚田」を訪ねた後の一服にオススメです。

- DATA
ト蔵庭園

Facebookhttps://www.facebook.com/tataranoie
住所:島根県仁多郡奥出雲町竹崎800

電話:0854-52-0075
定休日:なし(年中無休・見学自由)
入園料:無料
駐車場:あり(無料)


- DATA
たたらの灯

HPhttps://shimane-tanada.net/oidani/
イベント期間:9月下旬~10月下旬
ライトアップ時間:およそ18:00~21:00
会場:島根県仁多郡奥出雲町竹崎803-1(追谷棚田/綿打公園)

入園料:無料
お問い合わせ:090-8063-7471(たたらの灯実行委員会/加納)

取材協力・ 写真提供: 一般社団法人 奥出雲地域活性化プロジェクト/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

Related Posts
関連記事

メニュー
epauler公式ショップ