島根県のアジサイ農家と島根県が共同で開発した、オリジナル・アジサイ(紫陽花)。
「万華鏡」「美雲」「銀河」「茜雲」の4つの品種があり、うち「万華鏡」と「銀河」は国内最大規模の花の新品種コンテスト・「ジャパン フラワー セレクション」の“鉢物部門”で最高賞の「フラワー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。
その繊細で優美な姿は、「1鉢でも花束みたい!」と大人気。
~ 目次 ~
島根県と島根のアジサイ農家が生み出した、華麗な紫陽花「万華鏡」や「銀河」
花が少なくてジメジメとした梅雨に、憂鬱(ゆううつ)を吹き飛ばす美しさを見せてくれるアジサイ(紫陽花)。その由来は古くから日本に自生していた「ガクアジサイ」で、品種改良を重ねて今のような姿になりました。
そんな馴染み深いアジサイを、さらに品種改良してより美しく、よりゴージャスにしたのが『島根県オリジナル・アジサイ』です。
「万華鏡」「美雲(みくも)」「銀河」「茜雲(あかねぐも)」の4品種があり、それぞれ個性的な姿で人気を呼んでいます。
「こんなアジサイ見たことない!」個性豊かな4品種~万華鏡・銀河・美雲・茜雲
このように、かつてないアジサイとして驚きを呼んだ『島根県オリジナル・アジサイ』。
「万華鏡」が「フラワー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した2012年5月には、「あじさい」「万華鏡」の検索キーワードがYahoo JAPANのランキング5位に入りました。
その特長は、室内でも育てやすくて、ゴージャスな花が咲くこと。
「万華鏡」「美雲」「銀河」「茜雲」それぞれの魅力を、『島根県アジサイ研究会』副会長の常松哲夫さんにうかがいました。
●万華鏡
「万華鏡」は八重に重なる華やかな花形と、ホワイト&ブルー(またはホワイト&ピンク)のグラデーションが美しい品種のアジサイ。
小さな花(実際はガク)が集まって大きな花房を形成して、それを支える細い茎と、山アジサイの血統が現れた華奢(きゃしゃ)な楕円形の葉が、繊細な美しさを織りなします。
特に花色のグラデーションが魅力のアジサイで、「万華鏡のようにきらびやか」なことからこの名が付きました。デビューの2012年以来、今でも4品種の中で1番の人気を誇ります。
●美雲(みくも)
小花の形と花色が特徴的な、可愛らしくもゴージャスな品種のアジサイ。
名前は「花が沸き立つ雲のように見える」ことから付けられました。
デビューは2013年で、「万華鏡」の登場の翌年。「万華鏡」と同じくブルー系とピンク系の2色があり、繊細な花びらが連なる花姿が好評です。
●銀河
「銀河」は「万華鏡」と同じく八重咲きで、「万華鏡」よりも大きな花(ガク)を付けます。ホワイト&ブルー、またはホワイト&ピンクの覆輪が見事で、「万華鏡」に次ぐ人気のアジサイです。
花の一輪一輪が大きく、地植えにすると5cmほどにまでなります。さらに花房は25cm以上にもなり、花が小ぶりな「万華鏡」とは対照的に、力強い印象を与えてくれるのが「銀河」の特徴です。
「銀河」のデビューは2016年で、「白く縁取られた周囲の花が、まるで夜空に散りばめられた星達が描く銀河を想わせる」ことから名付けられました。
八重咲きと覆輪が組み合わさった‟極大輪”が素晴らしく、開花が進むと中心部の白い花が沸き立つ雲のように盛り上がっていきます。
●茜雲(あかねぐも)
2020年に発売された、もっとも新しい『島根県オリジナル・アジサイ』です。小輪の花を多数付けるため、繊細でありながらも華やかなイメージになります。
丈が低めで横幅にボリュームが出るため、靴箱の上など、少し高めの場所に置くのがおすすめ。目に近い位置でしっかり鑑賞できます。
名前の由来は「夕日に染まる雲を思わせる優しい色合い」。
咲き始めは淡いピンクで、開花が進むとだんだん色が濃くなっていきます。他の3品種と違ってブルー系はありません。
島根が生み出した美しいアジサイと、それを育てる匠たちの技!
このように、美しく神秘的な『島根県オリジナル・アジサイ』ですが、その美しさはアジサイ農家あってのものです。一鉢一鉢を丹精こめて育てているのが、島根県の協力を得ながら2010年(平成22年)に発足した『島根県アジサイ研究会』です。
「万華鏡」「銀河」「美雲」「茜雲」のすべてを開発・栽培しており、年々メンバーと出荷数が増加中。
その副会長をつとめる常松哲夫さん(写真中央右)に、栽培についてのご苦労や、アジサイを買った人から寄せられた感想などをうかがいました。
「アジサイは、その花の色に似て気まぐれで繊細な花です。そのため毎年変わる気候や日照量など、環境の変化に合わせた管理が必要です。
『島根県アジサイ研究会』の会員は、苗づくりから出荷までの間は、隔週ごとに圃場(育てている場所)を見回ります。そしてアジサイの世話や開花時期の調整などを行ないながら、なるべく多くの苗が美しく咲いてくれるように育てます。
こうした栽培の過程やアジサイの生育状況などは、『島根県アジサイ研究会』のFacebookで公開しています。花がお好きな方や『島根県オリジナル・アジサイ』にご興味を持ってくださった方は、ぜひご覧になってみてください」
『島根県オリジナル・アジサイ』は、主な需要である「母の日」のために4~5月に向けて開花を調整します。そうして贈られたアジサイを見た方の、
「目にした瞬間に見たことのない美しさにびっくりした!」
という声が多く寄せられているそう。
「うれしいことに、地元の島根では『母の日にはブルーの万華鏡を贈る』と決めていらっしゃるお客様が多く、特に娘さんからお母様への『母の日』の贈り物として定着してきた、というお話を花屋さんからよくうかがいます。
そして『来年も開花させるにはどうしたらいいですか?』といったご質問をよく頂きますが、育て方や綺麗に咲かせるコツ、年を越させるコツなどは、『島根県アジサイ研究会』のホームページでご紹介しています。
私どもアジサイ農家の栽培のこだわりや、『島根県オリジナル・アジサイ』への想いなども書いておりますので、ぜひご覧ください」
と常松さんは語ります。
美しい『島根県オリジナル・アジサイ』の陰にはたくさんの苦労が。それを糧に美しく花開いた。
かつてのガーデニングブームの頃には、鉢物の花と苗が大人気でした。
ですが長引くデフレ不況によって、それらの売上は低迷。育てている鉢物農家の資材費や燃料費なども高騰し、その経営の厳しさが増していました。
そんな状況を打破すべく、「ブランド力のある鉢花を開発しよう!」というプロジェクトが発足。島根県全体を挙げて、2005年から取り組み始めました。
それ以前はクリスマスやお歳暮向けのシクラメンと、春に咲く鉢花や花の苗が主な商品でした。そこでこれらと競合しない、初夏に咲くアジサイ(紫陽花)が選ばれたのです。
「当時のアジサイは、品種のバリエーションが少なくて現在のような華やかさは見られませんでした。そこを突けば活路が見いだせると考え、島根県の鉢花農家と島根県が協力しあったのです」
そして7年後の2012年。
多くの苦労と困難を越えた『島根県オリジナル・アジサイ』の第1号・「万華鏡」が誕生しました。そして2020年の今もなお、続けて開発された「銀河」「美雲」「茜雲」と共にロングセラーになっています。
人々の心を癒し、元気にさせてくれるアジサイを誇りを持ってお届け!
「とてもうれしいことに、このコロナ禍の中でもキャンセル待ちが出るほどの人気で、購入してくださったお客様や小売店・花市場・県の関係機関の方々にはとても感謝しております。今後も初心を忘れずに、足元を見すえながら堅実に栽培に取り組んで参ります。
新たな品種も複数 発売が控えていますので、ぜひご期待ください」
さらに、「モノよりコトにこだわりたい」、とも語る常松さん。
大人気となった『島根県オリジナル・アジサイ』ですが、それにこだわりすぎずに‟人々の暮らしを彩り、心を癒す花”をお届けし続けたいというポリシーを大事にしていくそうです。
「『島根県オリジナル・アジサイ』は、それぞれ個性豊かな品種です。ひとつひとつの特長を生かしつつ、お客様の暮らしを支える存在になれるように、独自の世界観と共にお届けして参ります」
ただ綺麗なだけでなく、それを飾る人々の心までも癒してくれるアジサイ。『島根県オリジナル・アジサイ』の華やかで夢あふれる姿は、多くの人々の暮らしを豊かにしています。
●島根県アジサイ研究会
HP:http://www.ajisai-k.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/shimaneajisai/
※農園でのアジサイの直売や、アジサイ農園の見学は受け付けておりません
取材協力・
写真提供:
島根県産地支援課,島根県アジサイ研究会/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら)