フラワースタイリスト・平井かずみさんが、シンプルの向こう側に見ていることとは?前編に引き続き、いつも全力投球の平井さんが50代に入った今だからこそわかったという、シンプルの魅力を教えていただきました。
相手への興味が、もの、花、人と仲良くなる第一歩
選び抜かれたものに囲まれた、◯◯テイストではくくれない、シンプルな平井さんのアトリエスペース。余白を生かし、洗練された空間が広がります。家具を見ると、フランス、中国、韓国と、出自はさまざま。なのに、ひとつの世界として溶け込んでいます。
「ものを選ぶ際には、背景のストーリーを大切に。どんな素材を使い、どんな場所で作られ、どう育ってきたのか……そこには、仲良くなれるヒントがぎゅっと詰まっているから。共感できたものなら、出自がバラバラでも、私の軸を通した、自分テイストが完成します。これは、花生けでも似ていて、どんな環境で生まれ育った植物なのかを知ると、ありのままの姿を思い描け、自然体で生けられるんです。」
“相手を知る”を大切にする考えは、人間関係も一緒。初対面でもきちんと名前で呼び、何が好きで、大切にされているのかを知ると、相手への興味が育ち、コミュニケーションが円滑になっていきます。
直感的な“好き”を大事にする心地よさ
フラワースタイリストとして活躍する平井さんは、元々は園芸マニア。好きが高じて、自然界の植物と触れ合う時間を提案していますが、同じように本能的に惹かれるものがあります。それは、天然石。
「なぜこれほど、鉱物に魅了されるんだろう?と考えていて、ふっと気づいたんです。花は“上へ上へ”と育ち、鉱物は土に還っていくもの。つまり“下へ下へ”の向き。私は、陰と陽など、世界は相反するもので成り立っていると常々思っていて、植物と鉱物も、よく考えたら同じような関係性。だから、ひとつの世界として、両方に強く魅力を感じるんだと深く納得しました。こうして感性と真っ直ぐに向き合うのも、自分の輪郭を知りいたわる、セルフケアのひとつかもしれません。好きを尊重するシンプルな生き方には、心が解放される気持ちよさを感じます。」
削ぎ落とした余白があるからこそ研ぎ澄まされる直感力は、余計なものを加えないシンプル処方で“効く”ホリスティックを大切にする、epoのコンセプトに通ずるものがあるように思えます。今回のお話を、「シンプル」の奥深さを考えるきっかけにしていただけたら嬉しいです。
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平井かずみさん
1971年生まれ。草花が身近に感じられるような“日常花”を提案するフラワースタイリスト。雑誌やCMのスタイリングの他、TVやラジオ出演でも活躍。東京・恵比寿のアトリエでは、花の教室「木曜会」や、五感を刺激する企画展を開催。感性に素直に、自然との調和を大切にする人生哲学も注目される。