「削ぎ落とす」のは、マイナスなことではなく「豊かに感じ取る」スペースを設けること。余計なものを取り払うと見えてくる、自分の本当に好きなモノやコト、その心地よさとは? フラワースタイリスト・平井かずみさんに聞きました。前編・後編に分けてお届けします。
年齢を重ねて見えたシンプルの意味
「やってみる!行ってみる!使ってみる!気になったら何でも挑戦するのが、私のスタイル。難しそうとか、センスがないからと、やらない理由を探しても仕方がないので、まずは飛び込んでみちゃう!そうしないと、見えない景色が必ずあるから。」
現在50歳の平井かずみさんは、そうやってぐんぐん経験値を上げ、失敗もたくさんしながら、今に至るそう。経験を重ねて情報が増えていくと、どんどん肉付けされていくような、自身が大きくなっていくようなイメージがありますが……、「むしろ逆で、すーっと削ぎ落とされました」と平井さん。
「いるもの、いらないものがわかるようになり、シンプルに整理整頓がなされるイメージです。」
“余白”が感性を育む潤いに
時間の使い方も、ペースを落としてシンプル化。
「以前は予定を詰め込み過ぎて、常にお腹いっぱいだったように思います。楽しいし、充実しているけれど、満腹感でちょっと苦しいような。働き過ぎだったのかもしれません。それは、豊かなようでいてちょっと違う?本質的な部分をもっときちんと味わいたい、と願うように。そこで最近では、分刻みのスケジュールをやめて、午前に1件、午後に1件くらいの予定を入れる、緩いペース配分を心がけています。」
余裕がないと、十分に受け取ることもできなければ、人に優しくすることもできません。感性を大切にしたいなら、“余白”こそが必要と気づいたそう。
「何事も、ぎゅうぎゅうに詰まっている状態には“乾く”ような、水分を奪われるイメージがあります。対して、余白は“潤う”イメージ。空白があるから、刺激を受けた何かをゴクゴク吸収できて、自分の根っこまで染み込ませていける。そうして、吸収したものが、心の中でじんわりと波紋のように伝わり、余韻として残ります。感性がちゃんと響けるだけのスペースを持っておくことが、大切なんですね。削ぎ落としたシンプルは、この上ない贅沢だと知りました。」
吟味することや、余白を楽しむこと。シンプルこその豊かさに気づかされる平井さんのお話は、後編に続きます。もの選びや人間関係、花を生ける際に大切にされていることをお伺いしたので、お楽しみに。
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平井かずみさん
1971年生まれ。草花が身近に感じられるような“日常花”を提案するフラワースタイリスト。雑誌やCMのスタイリングの他、TVやラジオ出演でも活躍。東京・恵比寿のアトリエでは、花の教室「木曜会」や、五感を刺激する企画展を開催。感性に素直に、自然との調和を大切にする人生哲学も注目される。